空は遠く95

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「ありがとう」
「おう」
 無造作にそれを受け取ろうとした力の手は、グローブごと佑人の手も握り込んだ。
 わ……!!
 咄嗟に手を引っ込めた佑人は、瞬時に耳までも熱くなっている自分をどうしようもなく、力が気づかないでほしいとただ思う。
 しばしの間があってから、「気をつけろよ」と、ぶっきらぼうに力は言い、バイクをUターンさせる。
 佑人が木戸をくぐり、後ろ手に閉めた時、遠ざかっていくバイクの音が聞こえた。
 ふう、と大きく息をつく。
 と、ポロッと涙が零れ落ちた。
 足を動かすことも忘れて立ち竦む。
 まだ、力の指の感触が右手に残っている。
 あんなことで動揺しているなんて、バカじゃないのか。
 けど何か、やっぱり、あいつって、スーパーマンだわ。
 危ないところへいきなりやってきて助けてくれてさ…
 ハハ……ほんと。
 俺、やっぱ、あいつ、好きなんだ。
 目いっぱい力に抱きしめられたことを思い出すと、さらに身体中が熱くなる。
 あんな状況で、俺が声を上げないようにするためだけのことだってのに。
 こんな気持ち知られたら、きっと、もっと嫌われるだろう。
 いや………キモいって、今度こそ軽蔑されるか。
 ほんと、バカみたいだ、俺。
 力のことを考えると頭が沸騰しそうになる。
 でも、キリキリとした心の痛みは一層きつくなる。
 冬休みか、当分、あいつの不機嫌そうな顔も拝めないな。
 思いがけず、力と一緒の時間をくれた十七回目のクリスマスイブは、ひっそりと更けていった。
 

 


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