ACT 12
世の中は雑然と一年の終わりに向けて突っ走っていた。
クリスマスが過ぎても東京は居座っている寒波のお陰で、晴れてはいても凍えるような朝を迎えた。
坂道を上った住宅街に入りかけのところにある、「ワンちゃん猫ちゃんとご一緒に カフェ・リリィ」では、二人の大きな男が今日もランチタイムの前から奥のソファを占領している。
「よう、どうするつもりだよ」
さらりと少し長めの髪をかき揚げながら、その一人が言った。
「何が」
制服を着ていないのでとても高校生とは思えない横柄な態度でふんぞり返っている男が聞き返す。
「東條の奴らのことだろーが」
「フン、シメてやるに決まってっだろ」
「じゃあ、さっさとやっちまおうぜ。やつらのたまり場、三鷹だっけか? 力」
「練の言うには、やつらヤバいことにも足突っ込んでるみてぇだから、その証拠固めしてんだとよ」
力は身体を起こして、テーブルの上に置かれたコーヒーを飲み干した。
「何だよ、ヤバいことって」
「バックにいる連中のパシリみてぇなこと? ヤクの運びとか?」
「フーン、運びで済めばいいがな。脳みそ足りねぇと思ってたが、あのバカども、十七やそこいらで、人生終わってんな」
カウンターの奥から、黒のギャルソンエプロンをした背の高い男がコーヒーサーバを持って出てきた。
「坂本っちゃん、えらくビリビリしてんなぁ」
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