いきなりの質問に、力は思いがけなく躊躇した。
「そりゃ……だから、あいつ、俺のこと嫌ってっだろ。第一、俺は啓太に付き添ってやっただけなんだよ」
「フーン、お前もやつのこと嫌い、なんだろ? こないだの丁々発止といい、お前らってとことん合わねぇって感じ? 水と油だな」
「うっせーな!!」
途端、思い切り不機嫌そうに力が怒鳴る。
「ま、いいさ。成瀬は俺が引き受ける」
「何だと?」
「あいつだって、気にくわねぇやつに四六時中見張られてちゃ、面白くもねぇだろ?」
そう言うと、坂本は徐に携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
「成瀬? 俺、二日ぶり。元気してたか? 例のカテキョの話だけどさ」
「おい、カテキョって何だよ?」
力が傍らで喚く。
それを制して、坂本は立ち上がり、カウンターの近くへ行って話を続ける。
「え、じゃ、今日なら、俺、行くし。成瀬んちの近くにコーヒー屋あったろ? おう、わかった。よろしくぅ」
「どういうことだよ!?」
坂本が電話を切ってソファに戻ると、力が睨みつける。
「成瀬にカテキョ、紹介してもらうことになってんだよ。成瀬のセンセって、兄貴の後輩だってさ」
「何で、んなことすんだって聞いてんだよ!」
「そりゃ、受験対策に決まってっだろ? 成瀬のカテキョだぜ? 外れはない」
「お前、カテキョいたんじゃねーのかよ、あっちの方もOKで一石二鳥とかって」
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