ACT 4
「あのガキ、散々ああだこうだといちいち文句つけやがって」
「え、まさか、移籍やめるってんじゃ」
それで怒っているのか。
「バカいえ、その程度でやめるやめないの問題じゃない」
「あ、でもイベントは無事終わったんですか?」
「何とかな」
「そ、それはよかったですね、はは」
空笑いをした良太は、所在無くまたパソコンに向かってみる。
「何、やってるんだ? 休めといったはずだぞ」
「いや、暇だったんで、その、小笠原さん関係の書類作っちまおうと思って」
「んなもん、もうやめて、つきあえ」
「へ……? でも……」
「聞こえなかったか? とっとと電源落とせ」
まだ怒ってる。
おいおい、小笠原さん~、とばっちりはごめんだぞ~、俺は。
良太は触らぬ神に、とばかりに、慌ててファイルを保存し、パソコンの電源を落とすと、工藤の後を追ってオフィスを出て、鍵をかけた。
「あの、どこ行くんですかぁ?」
マジ、キレてる、という雰囲気の工藤を横目に、良太は恐る恐る尋ねる。
「行けばわかる」
そう言ったっきり、押し黙ったまま工藤はスピードを上げる。
首都高に乗った車はあっという間に煌びやかな街の灯りを後にした。
「あの……」
一体何だってんだよ、どこ行くつもりだよ。
大型のベンツはかなりのスピードを出しているが、車内に大した振動も与えず滑るように走っていく。
大泉ICから関越に入った頃、良太もようやく工藤がどこに向かっているのか気づいた。
だが、相変わらず怒りを隠そうともしない工藤には声もかけづらい。
良太はあきらめて、窓の外に目を凝らす。
通り過ぎる夜の風景はやがて木立の連なりとなり、車の走る音だけが二人の空間を埋めていた。
何時間もパソコンを睨んでいたせいか、ちょっとうとうとした良太は、冷えてきた空気に目を覚ました。
ジャケットを羽織ってきてよかったようだ。
すっ飛ばしてきた車は、いつの間にか、雪に埋もれた山荘の前に停まった。
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