清風7

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 藤原の後ろから出てきた若い男が、「あけましておめでとうございます、工藤さん」と親しげに声をかけた。
「おめでとうございます、日本に帰ってたのか?」
「ええ、たまには帰んないと。そちらは和泉くんでしたよね? 姉がファンなんですよ、あなたの。綾小路涼です、よろしく」
「あ、いえ、広瀬良太と申します。工藤の秘書です。あけましておめでとうございます」
 いかにも育ちのよさそうな、ソフトな雰囲気の青年に微笑みかけられて、良太は慌てて涼の言葉を軽く訂正しつつ挨拶する。
「おめでとうございます。それは失礼しました、広瀬さん、どうぞ、お入りください。車、ガレージに入れてきますね」
 涼は笑顔を崩さず、工藤から鍵を預かると車に乗り込んだ。
「今の人は?」
「末息子の涼だ」
「てことはあの京助の弟? あんま似てないですね」
 傲岸不遜な京助の態度を思い出して良太が眉を顰めると、工藤は苦笑する。
 藤原に案内されて広い玄関ホールに通されると、「いらっしゃいませ、工藤さん」というおっとりした女性の声がした。
「あけましておめでとうございます。お招きいただきまして、本日はよろしくお願いいたします。こちらは広瀬良太です」
「あけましておめでとうございます。お忙しいところをありがとうございます。綾小路小夜子です」
 工藤と一緒に挨拶しているうち、呆然と見惚れていた良太は、にっこり微笑むその美人に慌てておめでとうございますを言うのが精一杯だった。
 何しろ、まるで千雪が着物を着てそこにいるのかと錯覚するほど、千雪によく似ていたからだ。
 よく見ればちゃんと女性だし、良太が考えていたようなキャリアウーマンとは違って雰囲気が柔らかだ。
 黒髪を品よく結い上げ、ラベンダー色の無地に春らしく赤い椿をあしらった帯がしっとりとした中にも華やかさを見せている。
「従姉ってこんなに似てるもんですか?」
「確かに、姉弟でもこうも似ているのは少ないだろうな」
 耳打ちしてくる良太に工藤は笑った。
「小夜子さん、客は揃ったのか?」
 はっと顔を上げると、たった今良太が思い浮かべていた倣岸不遜な顔があった。
「よう、あんたか。何だ、お前も一緒か」
「お前こそ、正月にうちにいるなんて、どうかしたんじゃないのか? 京助」
 憎まれ口のさなかに新年の挨拶を交わす工藤の横で、良太はついつい京助を睨みつけるが、京助は相手にもしないようすだ。
「そんなにタレントに困ってんのか? あんたのとこは。そいつをわざわざテレビに出すほど」
「また失礼なことを言ってないで、京助さん、工藤さんと広瀬さん、ご案内してちょうだい」
 京助の言い草に思わずカッときた良太が何か言う前に、小夜子がたしなめる。
「へいへい、畏まりました、お姉さま。アスカなんか待たなくてもう始めちまおうぜ」
「そんなわけにいかないでしょう。ごめんなさいね、京助さん、口は悪いけど悪気はないんですのよ」
 十分悪気があると思うけど、とは心の中で良太は呟く。
「アスカさんも来ることになってるんですか?」
 良太は工藤に尋ねる。
「ああ、夕べロケから帰ったばかりだが、来るつもりらしい」
 そうか、アスカは千雪を追って青山プロダクションに入ったというし、京助とも知り合いだったのだと良太は納得する。

 


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