卒業の時の、友達に戻ろう宣言も、あいつの気持ちが落ち着くまでと許したさ。
けど俺が間違ってたのか?
お前も俺と同じ気持ちでいると……。
初めて出会った時から何故か目が離せなかった。
ことごとく俺に対抗意識を燃やして突っ走るあいつが好きで。
お前もそうなのじゃないかとか全て俺の思い込みだった?
将清はあれやこれやと心の中で自問自答した。
「どうしたよ、黙り込んじまって。若干肩も落ちてるぞ? イロオトコが台無しじゃねーか」
「何がイロオトコだ」
元気に揶揄されて、将清は眉を顰める。
「またまた、会社の受付嬢からしてモテまくりで、社長の娘と婚約したんだって? さすが将清」
元気は将清の前に香りのよいコーヒーを置いた。
「どっからそんなデマしいれてきたんだ?!」
ちょっと声高に将清は元気を睨み付ける。
「どっからって、会社の女の子らのもっぱらの噂だってな」
「優作が言ったのか?」
確かにそんな噂を耳にしたこともあったが。
「社長の娘の利奈とは子供の頃からの知り合いなんだよ。オヤジと社長が友達で、よく利奈の彼氏の品定めさせられたくらいで。今の相手がフィアンセだぞ。それに利奈のやつ、優作とのこととか、俺の気持ちなんかとっくの昔に見抜いてる」
将清は声を荒げた。
「へえ、だったら、それ優作に話して誤解を解いた方がよくね? お前への当てつけに見合いで結婚なんか決めちまう前に」
すると将清はガタンと音を立てて立ち上がる。
「っと、どうしたんだ?」
元気は視線の定まらない将清を見上げた。
「京都行く。優作の編集部に聞いたら、あいつ出張昨日までだったのに、有休とったっつってたから、何かここんとこ変だったし」
大きな男がオロオロと落ち着かない表情を画そうともしない。
「待て待て待て、追いかけてばっかじゃ、あいつ逃げるだけかも知れないぜ? 冷却期間も必要だろ? 今夜はとりあえず策でも練ろうじゃん」
元気に言われて、将清はまたすとんと椅子に腰をおろした。
「そうだ……な。今夜、俺の部屋にくるか?」
「おう、どこのホテルだ?」
「前に泊った、Aホテルだ」
「わかった。じゃ、雑用が終わったらラインする」
将清は都内で個展をやるために十月にミドリが戻ってくるというような話をして、コーヒーを飲むと、そぞろな表情のまま店を出て行った。
「あいつもだいぶ煮詰まってんな」
元気はフンと鼻で笑った。
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