煙が目にしみる11

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 豪としゃべるのが嬉しくて仕方ないらしい紀子は、聞かれてないことまで、ちゃっちゃか説明している。
「じゃあ、俺はカモミールティー」
 元気は眉を顰めるが、豪はお構いなく、「俺、好きなんです」などと馴染みの客のように都築に言った。
「この店もいい感じですね」
 都築が頼んだモカとカモミールティーの用意をするカウンターの中の元気に、都築が話しかける。
「『ふろむゼロ』は四十代から五十代の男性をターゲットにした雑誌で、隠れ家的な宿や店を求める旅ってページを毎号載せてるんです。できれば、この店も取材させていただきたいな。ねえ、豪もそう思うだろ?」
 顎髭をたくわえた男は四十代だろうか、見かけより和やかな雰囲気だ。
「ええ、そうですね、ぜひやりたいですよね」
 豪も拳を握りしめ、熱っぽく口にする。
「『煙が目にしみる』かー、BGMもいいなー」
「たまたま友人が持ってきたレコードなんですよ。土産物を持った観光客がたまに入ってくるだけですし、こんな店、取材の対象にはならないでしょう」
 のんびり店を眺めまわしながら頷く都築に、元気はやんわりと断りの意思を示した。
「えー、せっかくだから、お願いすればいいのに」
 元気の言葉を聞きつけて、紀子がまた口を挟む。
「ここはいいんだよ。知る人ぞ知る、で」
「そーねー、ただでさえ、元気のファンとかが押しかけて煩いもんねー」
 ファン、などという紀子の言葉に、元気の中で苛立ちが増した。
「わかるなー、それ」
「豪さん、もちろん、元気のライブも見たことあるんだよね?」
 豪が紀子に賛同すると、話は元気にとって望まない方向へと逸れていく。
「何度も見たよ。写真もたくさん撮ったし」
 豪は自慢するように言った。
「きゃあー、うそうそ! そんなこと元気、一言も言わないんだもん。いいなー、CDもライブDVDも元気の入ってるやつって、ほとんど手に入らないらしくて」
「『GENKI』って、あの、人気バンドの?」
 都築も話に入ってくる。
「そうよ、元気は『GENKI』のオリジナルメンバーなのよ」


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