煙が目にしみる12

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 元気と『GENKI』をごっちゃにしながらも、豪と都築、それに紀子の三人で勝手に話が進んでいく。
「あれ、ここ、酒もやるようになったんだ」
 メニューを見ながら、豪が能天気な台詞をはいた。
「豪さんって、この店初めてじゃないの?」
「うん、学生ん時、元気のうちに遊びにきた」
「とにかく!」
 急に元気が声を上げたので、三人ははっと口を噤む。
「取材はお断りします」
 カモミールティーとコーヒーをそれぞれの前に置いて、元気はきっぱり言い放つ。
「紀ちゃん、今日は早めに店じまいするから、もう上がっていいよ」
 紀子は「はあい」と返事をするが、「元気、何かご機嫌斜め」とぶつぶつ呟いた。
 ご機嫌も斜めになろうというものさ。お前にここに来ていいと、いつ言ったよ!
 目の前の男に険しい視線をぶつけながら、元気は心の中で毒づいた。
「そうだ、紀ちゃん、取材とは関係ないんだけど、君んちの猫も撮らせてもらったから、できたら写真送るよ」
「えー、うそー! うちのミーまで撮ってくれたんだ?」
 コートの上にマフラーをぐるぐる巻いていた紀子は、剣呑な元気のオーラを気にもしない風な豪ののんびりとした言葉に有頂天になる。
「俺、猫とか犬とか好きでさ」
「そうなんだー」
 初対面というのに、二人はいつの間にかすっかりタメ口になっている。
 無神経というか無遠慮というか、そんなところもまったく変わっていない。
 どういうつもりだ? 今更、何しにきたんだ?
 そんなことを心の中で呟きながらも、一段とスケールが大きく成長した豪に会えたことは、元気にしても嬉しくないわけではない。


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