賑やかにおしゃべりに加わりながらも、音には一番うるさくて、ギターの調整に余念がない元気。
明るくやたら元気なだけがとりえのマサ。
そんなメンバーの中にあっては、常に冷静に物事を理論的に処理することができるみっちゃんが、必然的にマネジメントをやらざるを得なかった。
「そろそろ打ち上げ、行くぞ」
ギターを片づけた元気が立ち上がる。
「お前らもくる?」
にっこり笑顔を向けた元気に、豪は「行く!」と必要以上に力を込めて返事した。
『GENKI』は音重視のヘビーロック系で、昨今の売れ筋とはほど遠いバンドだ。
それでも六対四で女の子のファンがついているのは、一平と元気のルックスが大いなる理由だろう。
『GENKI』は留年した一平と新入生の元気が同じ講義で出会い、一平の仲間を巻き込んで作った学生バンドだった。
バンド名の『GENKI』も、元気の名前から勝手に一平がつけたものだ。
もともとメンバー一人一人の実力はかなりのものだったから、ライブで人気を得るまでそう時間はかからなかった。
ライブハウスを出ると、器材を積み込んだワンボックスにはマサが乗り込んだ。
一平の家に器材を置いてから打ち上げの店に向かうことになっていた。
器材が丸ごと入るような防音が施された部屋がある広いマンションを都内に買い与えられている一平の両親は二人とも弁護士で、大きな弁護士事務所を経営している。
無論ワンボックスも一平の車だが、それ以外に一平のマンションの駐車場にはポルシェなども置いてある。
犯罪にならなければ何をしても口は出さないという放任主義で育った一平は、欲しいものは買い与えられ、やりたい放題、所謂金持ちの道楽息子の典型というやつだが、大学進学と同時に、一応遊びの金は自分で稼げという親の方針で、意外やガテンバイトの常連ではある。