煙が目にしみる18

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 マサの運転するワンボックスが走り去ると、あとの面々は歩いて店に向かう。
「涼子、女の子数名一緒って言わなかった?」
 思い出したように元気が尋ねた。
「誘ったんだけどね、一人はバイト、一人はレポートあるって。第一、元気や一平の毒牙にかかるのわかっててつれてくるのもなーと思って」
「何だよそれ、人聞きの悪い。こんな優しい俺をつかまえて」
 元気はフフフと笑う涼子の肩に腕を回す。
「でなきゃ、自信喪失するかも知れないし。美人な元気に面と向かったら」
「あ、それわかる! 初めて元気に会った時、あたしは化粧してこれだけなのに、とか思ったもん」
「優花まで、何言ってんだか」
 元気はクスリと笑う。
「ほんと! 俺もそう思う! すんげくきれいだし、髪もさらさらで…」
 優花の横で力説するのは豪だった。
「おんやー、豪ちゃん、さては俺の魅力に参っちゃったの? いくら美人でも、俺にだけは惚れるんじゃーないぜ」
 元気が顔をぐいっと近づけると、真っ赤になった豪は大きな身体で後退る。
「い、いや、あの、俺……」
 湯気が出そうにしどろもどろになる豪を見て、涼子も優花もゲラゲラと大笑いする。
 一平だけはそんなようすを見ているのかいないのか、煙草をくわえたまま、ただむっつりと歩いていた。
 バイトで鍛えられた締まった長身に精悍で整ったマスクとルックスには申し分がないのだが、媚びることが嫌いで、自己中で我侭な名目上のリーダーの一平とは対照的に、元気はあたりが柔らかくて、男女ともに好かれるタイプだった。
 共通点はどちらも女に不自由したことがないというところか。
 釣った魚にえさをやらない典型の一平が、大抵怒った女に去られるのと比べると、元気の場合、あとくされなくという言葉がふさわしいだろう。
 だから別れた女たちとも友達でいられる。言葉を変えればそつがなく要領がよかった。


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