しばし閉じられたドアをみつめていたが、元気は煙草をくわえて火をつけながら、豪との会話の中で生じた不可解さを思い出し、眉をひそめた。
しかも豪が去った空気の中に、また別の感情がもたげてくる。
『一週間も、元気の顔見られないんだよな』
キーワードはそこにある。
何だ、そりゃ………何か、やばい。
焦燥感がトグロを巻いている。
煙の中に吐息を一つ落とし、元気は理解するのも億劫な自らの感情を煙草と一緒に灰皿に捻り潰した。
―――ある日、危うい均衡がくずれた。
いつかはそんな時がくるのを怖れながらも、どこかで渇望していたのかもしれない。
そろそろ夏も終わろうというのに、『レッドハウス』の熱気は凄まじいものがあった。
ネットでも勝手にアップされた動画のお蔭か、『GENKI』の評判は急激に広まっていた。
スタッフは酸欠で倒れる者が出るかもしれないことを心配したようだが、動くに動けないほどぎゅう詰めに入った観客の熱狂のボルテージは上がるばかりだ。
重厚でハードな音ををひたすら追い求めてきた。
この頃そんな『GENKI』のサウンドが一つになった。
一平がシャウトするごと、客もステージと一体になり、唸りを上げる。
切れ味鋭く、時には攻撃的に、時にはシンプルなメロディラインを謳いあげる元気のギター。
顔を上げた時、ライトをまともに浴びて、元気は一瞬頭の中が白くなった。
意識が戻ってくると、今度は一平の腕が肩を支えていた。
指は勝手に動いて音を弾き出している。
ズゥーーン――
一番好きなフレーズだ。
みっちゃんのベースは重く、しかしマサのドラムスに合わせて、正確なリズムを刻む。
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