最初から存在感の塊みたいな感じで、ただ者じゃないオーラがあったし、無茶苦茶不愛想なのにルックスもああだから、女の子引き寄せられるみたいに群がってたな。
般教で知り合ったやつとギターの話してた時だっけ、そんな一平が俺に声をかけてきたので、ちょっと面食らった。
口なんか聞かないやつかと思ってたら、高校時代バンドやっててメタル好きとわかって話が盛り上がり、その日のうちにライブに一緒に行ってた。
たまに群がっている女の子の中の一人と消えることはあったが、それ以外は四六時中、一緒にいたようなものだ。
両親、兄、姉とも弁護士一家という、でかい家に連れていかれて、地下にある防音が施された、グランドピアノ、ギターやベースが数本、アンプ、シンセサイザーまで揃ったまるでスタジオかという部屋に入った時はこの野郎と思ったものだ。
子供の頃習っていたというピアノはショパンのエチュードくらい弾きこなすし、元気がギターを鳴らしてみせると気に入ったようで、バンドでもやるかみたいな話になっていた。
酒も入っていたから、一平が絡みついてきた時も冗談の延長としか思っていなかった。
仕掛けられたキスに、まるで心ごと掴み取られた、気がした。
男にもそんな目で見られることはあったし、大学で彼女を作ってなどとごく普通に考えていた元気は、まさか本気で男にやられるとは思っていなかった。
しかもそういう相手だろう女の子は何人かいたのに、時折、一平は元気を誘ってきた。
遊びの延長だと、じゃれ合いだと思いつつ、そんな関係のまま、学生生活は続いた。
不愛想な一平と違って元気の周りには男女問わず友人知人が増えていった。
そんな中で同じ科のみっちゃんともメタル好きで一致してよく話すようになり、やがて一平と後に脱退したがドラムスの井村と四人でバンドを組むことになった。
バンド名は『GENKI』だ、と人の名前から勝手にとってつけた一平が宣言し、意義もなかったので夏には初ライブをした。
やがて、羨ましいことに高校時代からみっちゃんと付き合っているという浅野涼子がいろいろと手伝ってくれるようになった。
バイトと授業と練習とライブ。
今考えると結構ハードだったが、若かったのだろう、好きなことのためには何の苦にもならなかった。
けれど、ただのじゃれ合いだと思いつつ、一平のことを好きになっていく自分を認めざるを得なかった。
誰にも気取られるようなマネはしなかったけれど。
「でもさ、クラブとか行くだろ、俺ら、しょっちゅう、おねーさんとか、おにーさんとかモーションかけられるの。ドイツで中学生の女にナンパされた時は参ったけどな」
しばし一平のことにまた想いが飛んでいたのを打ち消すように、元気は豪の表情が段々剣呑になっていくのに気づかずに続けた。
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