煙が目にしみる31

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「でも、一平、ガタイでかいんで、凄んでおっぱらってもらうには最適なボディガード。あいつ、顔怒ってるじゃん、いつも」
 一緒になって笑うつもりで、元気はそう口にする。
 顔を上げると、じっと自分を見つめる豪の目は笑っていなかった。
「……俺だって、元気のボディガードくらいやれる」
 ややあって、ボソリ、と豪が言った。
 強い視線が一直線に元気にそそがれる。
 カタン――
 豪がグラスをテーブルに置いた音に、元気はピクリと肩を震わせた。
 それが合図のように、豪の腕が元気の身体を抱きすくめる。
 二人とももつれるように床の上に転がった。
「…豪…ちょ…待て……!」
「一平と寝てるんだろ?! 知ってるんだ……俺だって……!」
 走り出した豪を止めることができなかった。
 肌の擦れ合う生々しさを一瞬感じたろうか。
 堰を切ったように、豪はただ狂おしく元気の身体を侵食していく。
 身体中の血液がドクドク脈打ち、同時に体温が急速に上がっていくのがわかる。
 無理やり中にねじ込もうとする熱さと劇痛に、怯えた元気の手が豪の首にしがみつき、その指が震えながら豪を誘う。
 こいつは一平じゃない!
 胸の奥底からそう叫ぶ自分がいた。
 けれども、若いだけの欲望に流され、ようやく我に返った時、元気は動くことさえままならぬ状態で、ベッドに横たわっていた。
「…わりぃ、元気…俺、調子にのって…からだ、平気?」
「……なわけないだろ…!」
 ペシッと力なく豪の頭を叩いて、元気は眉をひそめる。
「……滅茶苦茶やりやがって!」
 喚くと下肢に鈍痛が走り、元気はぐったりとベッドに身体を沈ませた。
 それでもまだ足りないとでもいうように、豪は元気に覆い被さり、深いキスをする。
 一平への想いのきつさをこいつの欲望に付け込んですり替えてしまった。
 小さな炎のような罪悪感が元気の心の中に芽生えていた。
 だが自分にのっかった豪が、そんな言葉を口にした時。
「好きだ、好きだ、元気……」
 元気は豪の言葉に引っ張られるように、自分の中のきつい想いに蓋をしてしまった。


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