豪と優花の関係が目に見えて険悪になってきたのは、秋を迎えたばかりの頃だったろうか。
その頃、『GENKI』のアルバム『CRY OUT』からの曲、『声をあげろ』が人気を呼んで、インディーズでも順調な売れ行きを見せていた。
『GENKI』の曲は大半が元気と一平がそれぞれ作ったものをみっちゃんがアレンジしている。
ジャケットは無論、豪が撮ったライブショットだ。
『声をあげろ』は元気が創った曲だった。
攻撃的なリズムと切れのいい明るいメロディ、曲の節目ごとに一平の語りかけるようなボーカル。
粗悪ながら涼子作製のライブディスクもそれなりに売れた。
時折、大手の制作会社の人間がライブに現れ、彼らの周りではいよいよメジャーデビューも近いなどとまことしやかに噂された。
彼らの人気が勝手に一人歩きするのとは裏腹に、『GENKI』のメンバー間にはぎくしゃくしたものが広がっていた。
特に一平の不機嫌さがそれに拍車をかけ、ライブにも微妙な歪みが生じた。
落ち着かない内部事情にもかかわらず、ネットにアップしているライブショットはアクセス件数が人気沸騰を後押しし、ファンは如実に増えていった。
「お前、ちゃんと大学行ってるのか?」
カメラのバッグを降ろし、ステージのすぐ傍らに陣取った豪の前では、元気がギターのチェックをしていた。
「心配すんなって。ちゃんとゼミにも顔出してる」
「ふん、お前の心配なんかするか。金の無駄遣いで親が嘆くんじゃないかってこと」
「ええー? 冷たい~、俺のことも心配してよ、元気」
拗ねたような振りで、豪は元気を斜に見る。
ガン! と元気の隣でアンプが蹴り倒された。
「おい、一平!」
みっちゃんが怒鳴る。
それに耳も貸さず、不機嫌そうな一平はふらっとステージを降りて楽屋に引っ込んだ。
一平の後ろ姿を見やって、元気は唇を噛んだ。
以前は不機嫌なことがあっても、元気が一平を宥めておさまっていたが、一度機嫌を損ねるとその頃はもう誰が何を言っても聞かなくなった。
そして危惧したことが起きた。
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