煙が目にしみる35

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 原因は客のノリが今ひとつだということだったろう。
 一平が、ライブの途中で降りてしまったのだ。
 しかも、ライブハウスを出て行って戻ってこない。
 マサが後を追ったが、途中で見失った。
「どこ行きやがったんだよ、一平はぁ!」
「一平、連れ戻してこいよ!」
 客は当然怒り出した。
「落ち着いてください。大変申し訳ありませんが、今日のライブはこれで終了します」
 みっちゃんと元気は必死に彼らを宥めようとした。
「なめんじゃねー、俺たちは金払ってきてんだ!」
 一部の酔った男たちが、彼らに詰め寄って、益々収拾がつかなくなる。
「すみません、一平のやつ、ここんとこ調子が悪くて、勝手なことをしてほんとに申し訳ありません」
 元気は声を張り上げて謝罪する。
「ちょっと売れてるからって、いい気になるんじゃねーぞ」
 その時、元気の前にいた大柄な男が、元気をステージに突き飛ばした。
「きゃあ!!」
 女の子から悲鳴が上がってすぐ、逆に男は飛び掛かってきた豪に殴り倒され、客の中に沈んだが、すぐに男は起き上がって今度は豪と取っ組み合いになる。
「やめろ! 豪!」
 元気が止めに入るのに、みっちゃんとマサが加勢し、ようやく二人を引き離した。
「皆さん、どうか落ち着いてください。今日のライブの代金は返金させてもらいます。大変申し訳ありません。こちらに並んでいただけますか」
 危うく暴動になりそうなところを、マイクで呼びかけた涼子の言葉で、その場は何とか収まった。
 みっちゃんが苦渋の決断をしたのだ。
 それは彼らにとって非常に痛手であったが、いたしかたなかった。
「バカか、お前は」
 男と殴り合い、顔を腫らした豪に肩を貸しながら、元気は呟いた。
「悪かったな、あんたがやられて、我慢ならなかったんだよっ!」
 豪は吐き出すように言った。
「豪、大丈夫?! 何で豪がしゃしゃり出るのよ! 関係ないのに! 病院行かなきゃ」


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