煙が目にしみる43

back next  top  Novels


 T市には既に冬の気配がすぐ傍まできていた。
 通夜と葬式は岡本家の菩提寺で行われ、商店街中の人々が集まり、その人柄を忍ばせた。
 東京に戻る日、元気はCLOSEDの札が出たままの、父親の店の前に立った。
 これって、卑怯な俺に下された罰?
 元気は涙が溢れるのをどうすることもできず自嘲し、そしてある決心をした。
 充電切れだった携帯を復活させると、留守電とメールで一杯だった。
 その殆どは豪だ。
 通夜の前にメールを入れたみっちゃんから知らせを受けたらしかった。
 兄の車で東京に戻り、元気が自分のアパートに帰ると、豪が待っていた。
 何週間も顔を見ていない気がした。
 豪は人目もはばからず、何も言わずに元気を抱きしめた。
 二人は部屋に入ると、優花の事故があってから初めて抱き合って眠った。
 朗報もあった。
『GENKI』は正式にWミュージックと契約し、翌年の春にはメジャーデビューが決まった。
「デビューアルバムとツアーがもう決まった」
 電話の向こうで、オヤジさんは残念だったな、と言った後、みっちゃんは勢い込んで伝えてきた。
 終幕は近づいていた。
 幕が降りれば、何もかも好転するはずだ。
 いつかはそんな時がくるのを怖れながらも、どこかで渇望していたのかもしれない。

 


back next  top  Novels