葉が落ちた庭の木々が、病院の壁の白さと相まって一層寒々しさを演出していた。
ドアをノックすると、「どうぞ」と言う明るい声が聞こえた。
元気が中に入ると、ベッドの上の優花は、数秒、元気の顔を見つめた。やがてその表情が険しいものに変わる。
「何しに来たのよ!」
「元気そうじゃん」
元気は笑みを浮かべる。
二人部屋だが、優花の隣の患者は部屋を出ているようだった。
「よく平気で顔を見せられたわね! あんたの顔なんか見たくもないわ! 出てってよ!」
優花は元気が枕もとのテーブルに置いたバラの花束を掴むと、元気めがけて投げつけた。
「男までたぶらかしてたなんて、汚いったら! どうせ一平とも寝てたんでしょ! ああ、いやらしい! 反吐が出るわ」
「あーあ、花には何の罪もないのに」
自分を罵倒する優花の言葉の一つ一つを自虐的にとらえながら、元気は花束を拾う。
「聞いたわ、おとうさん亡くなったんですって? 罰が当たったんじゃないの?」
さすがにその一言は心臓に応える。
「人の不幸を、そんな風に言うもんじゃない」
「な…によ! えらそうなこと…」
真っ直ぐ元気に見つめられて、優花は少し怯む。
「俺が誰と寝ようと、俺の勝手だ。お前には関係ない」
飄々と伝える元気の言葉に、優花は拳を握り締め、唇を震わせる。
「フン、バンドのデビューが決まったそうじゃない? でも、あたしが一言、あんたのことマスコミに話したら、面白いことになるわ。ファンだってがっくりよね、ははは」
勝ち誇ったように優花は笑う。
「まあ、遊びも過ぎたことは認めるけど、俺は春にはもう東京にはいないから、今更そんなこと誰にしゃべったって、何の得にもならないさ」
「どういうことよ!?」
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