門を出たところで、元気はすごい勢いで今度は肩を掴まれた。
「何やってんだよ、どういうことだよ、春には東京にいないって、優花が……」
怒鳴りつけたのは豪だった。
息せき切ってやってきたらしい、筋書きにはなかった豪の出現に、元気は一瞬うろたえる。
「……お前にも、世話になったな。オヤジの店、やるんだ。兄貴はこっちに仕事があるし、おふくろ一人でおいとけないしな」
「世話になったって、何だよ、それ!? 言っとくが俺は元気と別れる気はないからな!」
「でかい声出すなよ、呆れたやつだな。ガキの遊びは終わったんだよ」
「………俺を、捨てるのか?」
見上げると、豪はぼろぼろと涙をこぼす。
雨はひどく冷たかった。
「いい加減にしろ、捨てるとか捨てないとかの問題じゃないだろ? カメラ、がんばれよ。じゃな」
元気は豪を押しのけて歩き出した。
「チクショウ! 毎日携帯に電話するからな!」
豪が怒鳴る。
「携帯なんか解約した。電話かけてきたって俺は出ない」
「いやだ! 今の仕事が片づいたら、追っかける!」
「ストーカーなんかうちに入れない。店にきたって、口も聞かない」
「チクショウ! 俺は諦めねーからな!!」
背後で激昂する声には、嗚咽が混じっていた。
豪の後ろには一平と消化不良な顔のみっちゃんが黙って立っていた。
元気は振り返るつもりはなかった。
最後まで、俺はお前に言うことはできなかったな、好きだって。
元気は手放しで泣いているだろう豪に、心の中で語りかける。
卑怯者は去る。
それで幕だ―――。
あれから―――
お前の涙が、心に刺ささったままだ。
環境が変われば浮上するなんて、甘かった。
お前の無垢な心をズタズタにして、俺は放り出した。
酷い言葉を投げつけ、大切なものを捨てたのは俺だ――――――。
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