煙が目にしみる49

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 どちらかというと以前は可愛い雰囲気だったが、少し大人っぽくなった。
 ビルから出た元気は、ふうっと一つ大きく息をつく。
「全部見られなかったな。せっかく東京くんだりまで来たんだし、ちょっと歩いてみるか」
 元気は地下鉄に乗って小田急線代々木上原で乗り換え、下北沢で降りる。
 昔はよくライブで来た町だ。
 辺りはすっかり様変わりしていた。
 まるで浦島太郎だな。
 目指すライブハウスは未だに汚い壁もろともそこにあった。
 店の前にはライブを待っているらしい少年少女たちがたむろしている。
「お、『Flamethrower』かぁ、懐かしいなー」
 元気はライブハウスにべたべた張ってあるポスターを見て独り言ちた。
「元気さん! 元気さんでしょ?!」
 振り向くと、見覚えのある顔が笑っている。
「よう、橋本か、久しぶり」
「久しぶりじゃないっすよぉ、ついに戻ってきたんっすか? 俺らのライブきてくれたわけ?」
 捲り上げたTシャツの腕には、ファニーフェイスとはアンバランスなタトゥー。
「お前、寒くないか?」
「走ってきたんで。じゃ、行きましょうか」
「…じゃ、ってどこへ?」
「ライブっしょ?」
 橋本は元気の腕を掴んで、ライブハウスの楽屋まで連れて行く。
 楽屋に入ると、ごつくさくてでかい男たちが、「うぉー、元気さん」と雄たけびまで上げて駆け寄ってきた。
 元気がまだバンドをやっていた二年前、『Flamethrower』は『GENKI』を目指す駆け出しだった。


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