時々電話をくれるみっちゃんの話だと、インディーズではかなりの人気と実力を持つメタルバンドに成長したようだ。
「今までどこ雲隠れしてたんっすか?」
「いよいよ、『GENKI』に戻るんだ?!」
口々に問い詰められて、元気は閉口する。
「ちょっと物見遊山にきただけだって」
「えー、『GENKI』に戻んないんなら、いっそ、俺たちと一緒にやりましょうよ」
ははは、と元気は笑うばかりだ。
もう遊びでしかバンドをやるつもりはない。
もともと彼らのようにバンドで一生、なんて夢を描いたことはないのだ。
好きだからやっていただけで、元気自身は楽しめればそれでよかった。
メンバーには不義理をしたかとも思うが、現に『GENKI』は元気がいなくてもビッグになっている。
もし、あの時あいつに逢わなければ、もし、父親が今も健在ならば、ひょっとしたら今も『GENKI』でギターを弾いていたかもしれないが。
俺って、意志薄弱?
けれど、もし、や、たら、の中には何も真実がない。今の自分が在るべきところに在るだけだ。
メンバーに誘われるままにギターを手にとって、ライブに飛び入り参加した。
観客の中には元気を知っている者も結構いたらしい。
一時騒然となったライブハウスは、次第に熱を帯びていく。
久しぶりにそんなライブを体感し、観客よりも自分自身が酔いしれる。
重く深い音の中で目を閉じると、脳裏を去来するかつての情景。
あいつの顔、声、手のぬくもりや息づかいまでが今でもリアルに思い出してしまう。
優花と、ちゃんとうまくいってるわけか。
展示会場で見た二人の姿が目に焼きついてはなれない。
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