煙が目にしみる58

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 ちょうどホームルームが始まった頃だろう、そういえば以前東とこの辺りで和んでいたら、定年退職した元担任の北岡につかまり、文芸部の顧問だった北岡に半ば強引に『詩の会』というグループに引き入れられた。
 今年も年に一回発行する『文芸山稜』なる同人誌に寄稿させされている。
 といっても崇高なる文芸作品とは程遠く、山稜という誌名からも察せられるように山岳部兼文芸部OBが多く在籍し、山を愛でるような作品がメインだ。
 いずれにせよ元気は、書いた詩に曲を付け、高校OBで結成した『昇り竜』なるバンドでクリスマスライブで演奏したりと、お気楽にやっている。
「さあて、リュウ、寒くなったし、ちょっと走って帰るか?」
 元気はわかったと言わんばかりにワンと応えるリュウと軽く走り出した。

 伽藍の店内には、まだ客はなかった。
 この雪じゃ、観光客の出足も悪いなー。
 十二月も中旬となると、こんな田舎街でも年の瀬を迎えてそれなりに活気をみせているが、このところ何日も降り続いている雪には、みんなが手をやいていた。
 店の前の雪かきにげんなりしながら、元気が店を開けたのは、いつもの十時半より一時間もあとだった。
「わー、おっきい!! 本物のもみの木だ!」
 ドアを開けて入って来るなり、紀子が声を上げた。
 店内の隅に置かれたもみの木は先が天井にくっつきそうだ。
「でも元気がツリーとか、んな、ガキっぽいことするか、なんて言ってたくせに」
「毎日この雪じゃ、気分が滅入るだろ。山奥に住んでるダチが取ってきてくれたんだよ」
 人受けがいいのは子供の頃からで、今でも元気の顔を見ると何かしてやりたい衝動に駆られる者は結構いたりする。
「しかし、でかいし、電飾足りないかもな」


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