煙が目にしみる62

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「相談って?」
 元気は豪を無視して東に話しかけた。
「おう、相談っつうこともないけどな、瀬川のやつ今、T病院にいるだろ? 三月末にまた大学に戻るらしいけど、ま、いずれは家継ぐんでこっち戻ってくるって話で」
「いくら親が開業してるっつっても、あいつが医者とか、瀬川だけにはかかりたくないぞ」
 東が右に同じだと頷く。
「ま、それはおいといて、瀬川が行く前にどっかで集まろうってことになって」
「いんじゃね? 俺はいつでもどこでも構わないぜ」
「おう、ならいいんだけどな」
 歯切れの悪い東の言い方が元気は気になった。
「何だよ?」
「いや、瀬川のやつ大学時代お前らのライブ行ったって」
「そんなこともあったな」
 話がそっちに行くとは思わなかった。
「去年のクリスマスライブん時やった曲、えらい盛り上がってたやつ」
「『走って行こう』でしょ? 元気の新曲」
 我慢できなくて話に割って入ったのは紀子だ。
「それ」
 東が眉を顰める。
「瀬川、バンドの『GENKI』のこともやたら詳しくてさ、朝倉が携帯でとってた去年のライブ聞いて、その『GENKI』の新曲かと思ったけど、最新版にもどこにもないし、大体、『GENKI』って、元気、お前そのものじゃねーかって、そのうちお前はきっと『GENKI』に戻るんじゃねーかって」
「わけねーだろ」
 苛つきながら元気が断言した。
「メンバーもたまにここにきてるって聞いたぞ」
「俺は好きで曲作ってるだけ」
 元気は軽く笑った。
「………新曲って?」
 それまで黙っていた豪が口を挟んだ。
「すっごいよかったよ、超クール。一平の曲も好きだけど、やっぱ昔っからのファンは元気の曲に心酔してるもんね」
 豪に同意を求めるように紀子が言った。
「うお、こんな時間! メシ食って、仕事だ。んじゃ、決まったらまた知らせるわ」
 コーヒーを飲み終えると、東はそそくさと席を立った。
「おう、連絡くれ」


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