「……でけー声だすな」
極力抑えた声で元気は豪を叱責する。
「優花の事故のことで、あんたが責任感じることなんかないんだ。俺のせいなんだ。だから、とにかくあんたの気がおさまるまで、近づかないでおこうと思ったんだ」
今にも泣きそうな顔で、豪は訴える。
「うぬぼれんじゃねーよ。いいか? 俺はあの時、もう終わりだって、言ったはずだ」
元気は語気を強めて豪の目を覗き込む。
唇を噛みながら、豪は一瞬苦しそうに顔をしかめた。
「それに、優花はどうしたよ」
その問いに、豪はしばし視線をさまよわせる。
「…優花は、関係ない。つきあいはあるけど、そんな……」
「いい加減なことを言うな」
豪は首を横に振る。
掴んでいたセーターから手を離すと、豪はそのまま元気を抱きすくめた。
「終わったって言うんなら、優花とのことなんか、とっくに終わってる! ってより初めっから優花とはほんとにそんなんじゃなかったんだ。昔から仲良かった延長で、あいつが思うようには……何も……なかったんだ」
元気の肩に顔をうずめ、豪はすがるように言葉を吐き出した。
「終わったって言うんなら、やりなおしたいんだ、あんたと」
豪は力任せに元気を抱きしめる。
「……離せ…」
「嫌だ…」
苦しい。
豪の心が苦しい。
それが伝わってくるから、苦しい。
ならば、いっそのこと、と元気の心がそんな言葉を選ばせる。
「言っとくが、俺は、一平がつれねぇから、お前に流されただけだ。まあ、そんなにやりたいんならいいぜ?」
「…元気…」
豪は顔を上げて元気を見つめる。
「一平と寝たくせに、俺とは寝られねーのかってんだろ? 俺はかまわねーぜ、ホテルでもどこでも行こうじゃねーか」
豪を突き放し、ドアを開けて外に出る元気を、豪も慌てて追った。
「元気…! 待てよ」