気にならないはずはなかった。
作品展で久しぶりに見た豪の写真。
豪と優花が一緒にいるのを見ていたくなくて早々に立ち去ってしまったから、奥にあった作品を元気は見ていない。
「これ、きっと、元気のために置いていったんだよ、一平さん」
ふいに、紀子が言った。
「ばかいえ」
元気はとりあわず、「オリーブ切れてるから買ってくる」と、ジャケットを羽織り、店を出た。
「なーにがオリーブよ、元気の意地っ張り! 人間素直になんないと、幸せになんかなれないんだから!」
閉まりかけたドアに向かって、紀子は叫んだ。
「なんや、いったいどういうこっちゃ? さっきのまるで愛の告白みたいだったな。一平、キスするかと思った」
イマイチ事情が飲み込めない東は、紀子に疑問を投げかける。
「鈍感! だからすぐ振られるのよ。三角だかダブル三角だかの関係なのよ」
ぷんぷんしながら紀子はカウンターの椅子に座り、脚を組んだ。
「へ?」
「何を怖がってんのよ、元気は」
紀子はボソッと言って、口を尖らせた。
その日は早々に紀子を帰し、元気は七時で店を閉めた。
少し頭を冷やした元気が戻ってきてからも、東は写真集を気に入ったらしく、夜の絵画塾の時間になるまでずっと丁寧に見ていた。
帰り際、「写真集、ちゃんと見たほうがいいぞ」と言い、東はぽんぽんと元気の肩を叩いた。
写真集はカウンターの上にあった。
片づけを終えたあと、カウンター側だけ灯りを残し、元気は写真集を手に取った。
カバー写真で美しいフォルムを描いているサギは、東が言ったとおり、T市から車で十分ほどの町で撮ったもののようだ。
扉にもサギがいた。だが、それは表紙とは季節が違う。
場所もT市内で写されたものだ。
驚いたことに、カモシカがいた。
背景の山々の連なりは乗鞍である。
スキー場でのショットも、遠方に槍ヶ岳が見えている。
「あいつ……そんな何度もこの辺りに来てたのか」
十一月に現れたのが最初ではなかったのだ。
にほんブログ村
いつもありがとうございます
