煙が目にしみる72

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 心が落ち着かなくなり、次々とページをめくる。
 霧多布湿原のタンチョウ、鮮やかなエゾカンゾウのオレンジ色、沖縄だろう、のんびりとあくびをしている猫、牛の顔。
 そういったのどかな情景がやがて中東の子供たちに変わる。
 戦場となった街に荒んだ空気の中では子供たちの澄んだ目だけが救いだ。
 写真の一つ一つに、豪の思いが見える。
 自分が知らないこの二年の間、豪は何を思い、ファインダーを覗いたのだろう。
 ただの友達なら、どんなに喜んで迎えてやったかもしれない。
「俺ごとき、かまってる場合じゃないよな」
 呟いて、元気はひとり笑う。
 ぱらぱらと写真集をめくっていた元気は、最後のページで手を止める。
「……え………」
 それはモノクロで印刷された写真だった。
 タイトルには『ミュージシャン』としかない。
 ギターを抱えてステージに膝をついているのは確かに元気だ。
「こんなもの、いつのまに……」
 元気が見たこともないショットだ。
「あのバカ……」
 豪の痛烈な思いがストレートに伝わってくる。
 元気は写真集をばたんと閉じる。
 胸がきりきりと痛んだ。
「だからなんなんだよ! 俺にどうしろってんだよ!」
 やりきれなくて、拳でカウンターを叩く。


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