夏を抱きしめて10

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 撮影が終わり、お疲れ様でした、と頭を下げた途端、豪の携帯が鳴った。
 まさか元気? と慌てて出てみれば、相手はみっちゃんこと、古田光彦、GENKIのベーシスト兼マネージャーである。
 一瞬ガックリしたものの、飲みの誘いに、おそらく井上美奈子の件で誤解を招かないためにも行くと返事をした。
「最近、えらく景気よさそうじゃん。巨乳の人気女優ともいい感じで」
 指定された居酒屋の四人掛けテーブルで、生ビールで乾杯したあと、案の定明るい声でみっちゃんに皮肉られた。
「誤解だ! あんなの、嘘っぱちだって! ありっこない!」
 バンバンバン、と、豪は力任せにテーブルを叩く。
「お前、テーブル壊すなよ」
「マスコミってか、あの女優の事務所にはめられたっつうか……」
「ああ、わかった。で? 元気と喧嘩したって?」
 ストレートに問われて、豪は、うっと詰まる。
「喧嘩……っていうか、そこまでいかないっていうか……とにかく元気、携帯も切ってるし、電話したら、仕事中だっつって切られちまうし………もう何日も元気の声聞いてない……」
「そりゃ、お前、どうどうと全国放送で浮気話流してみろ、声なんか聞きたくもねーだろ」
 みっちゃんの世間話をするかのような穏やかな声にもかかわらず歯に衣着せぬ台詞がぐちぐちと語る豪の胸にグサリと突き刺さる。
 そこへまた豪の携帯が鳴った。
 表示された一平の文字にぎょっとしたが、恐る恐る豪は電話に出る。
「てめー、いい度胸だな」
 地の底から聞こえるような恐ろしげな一平の声に豪は固まった。


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