「大学行って音楽活動始めて、髪伸ばしただろ? 母さんが言うことに、元気はちょっと大きいけど私に似て美人だから男にももてる、だってさ」
母親のかなりなトンチンカンさに二人してゲラゲラ笑う。
「まあ、実際元気は男女関係なかったみたいだし」
「……俺って、ほら、あんまり考えないやつだから」
「でも豪は特別なんだろ?」
自嘲気味な元気の台詞を受け取って、勇気がきっぱり口にする。
「俺さ……長い人生だからたまにはこんなのもありかも、なんて思って……」
「また、隠居老人みたいなことを」
「うん、終わったら終わった時なんて……いざとなったら、とてもそんな風に思えなくて……動けなくなっちまって………バカだろ………俺。ほんとは、弱っちいやつだし」
勇気に肩を引き寄せられるまま、元気は頭をもたせかける。
「元気はちょっと自分を外に出した方がいい。多少みっともなくてももっとじたばたしていいんだから」
元気は肯定も否定もせず、しばらく目を閉じていた。
でも、もう遅いのかも……。
だけど、豪を失うのがひどく恐い。
こんなに俺って臆病なやつだったんだ。しかも欲が深くて、嫉妬深くて、情けない。
「元気…」
幼い時のように兄の声が安堵をもたらしたのだろう。
「俺………ガキみてぇ……」
ここのところちゃんと眠れていなかった上、列車の中でも目が冴えて一睡もせずだったせいか、ようやく睡魔が訪れる。
元気は久しぶりにぐっすりと眠った。
翌朝、小さなギャングたちに叩き起こされるまでは。
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