「ラインも携帯も恋人同士の必須アイテムじゃない! 離れていても元気の顔が見たい、って豪ってばかわいいじゃない!」
元気のジャケットのポケットから豪がくれた携帯が覗いていたのを勝手に取り出し、紀子が機能の説明をしてくれる。
会えない日の方が多いからというのはわかるが、どちらかが可愛い女の子だったらまだしも、ヤロウがヤロウに携帯で甘い愛の言葉を囁き合う図なんぞ、想像するのも空恐ろしいじゃないか。
囁く、というか、宣言するのはもっぱら豪にまかせてしまっている元気だが。
始めはよかったのだ。
長い人生、こんな恋もたまにはあり、だよな。
そんなことを考えて、あんな傷つけたはずの自分を追いかけてきてくれた豪を、直情的だが素直なその心を受け入れてしまった。
よもや近隣に豪が居を構えて住んでしまおうとは、元気には思いも寄らなかった。
決して遊び半分の気持ではない。それは断じて。
豪が自分のもとに戻ってきてくれることが嬉しくて。
けどな………、豪、お前…………ほんとに後悔してないのか? それで……。
胸の奥に燻るブラックホールが段々大きくなるような気がする。
半年か。
目が覚める頃かもしれない。
もう、そろそろ…………。
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