そんなお前が好きだった125

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 クラウスと言うのが、先日井原が言っていた金髪の色男のことだろうとは、元気も察しがついた。
 ただ何で自分を呼んだのかと、元気はふと疑問がわく。
 クラウスの酒を飲んでご機嫌というのなら、もしやそのクラウスとやらとうまくいった、とか?
 だから井原は呼べない、とか?
 ん? でも、餞別の酒とか今さっき言ってなかったか?
 頭の中に次々と疑問が沸いてくるものの、酒を一口含む。
「ん、美味い、かも」
 と元気が呟いている間に、目の前の響がそれじゃ味わうこともできないだろうというようすでゴクゴクと酒を飲み干した。
「何かご機嫌になるようなことがあったんですか? 井原も呼んでやったらあいつ飛んで来るのに」
 元気の発言の井原、に響は反応して、しばしうつろな視線を宙にはわせた。
「井原……」
「もう寝てたとか?」
「井原に昨日告られてさ」
 カップの酒をまた一口飲みこもうとした元気は、いきなりの聞き捨てならない言葉にむせ返った。
「………それで?!」
「さっき断った」
「断ったあ?! なんで?!」
 さらに衝撃的な発言をさらりと口にする響を元気は凝視した。
 井原が響を好きなことはもう十年も前から知っていた。
 それにみていれば明らかに響も井原を好きなはず、だったのだ。
「今日の放課後、荒川先生がきて、井原先生に近づくなって言われて」
「はあ???」
 そんなことを言いながらも、響はへらへらと笑っている。
 完全に酔っぱらって口にしている言葉が理解できていないのが元気にもわかった。
「こんな田舎で、男同士で、教員同士で、リスクが高いって、まあ、そりゃそうだなって」
 響はハハハと笑う。


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