いつだってこれだよ3

back  next  top  Novels


 途端、猛烈な風に真っ向から出くわし、思わず身を硬くして目を閉じる。
「もう三月も近いのに、なんなんだよう」
 とにかく早いとこ帰ろうと地下鉄の階段を駆け下りた。
 通り道にあるコンビニで弁当を買い、とぼとぼと今の浩輔の住居である河崎のマンションへと辿り着いた浩輔は、ふとマンションのエントランスの前でうろうろしている男に気づいた。
 近づくと何となくその顔に見覚えがある。
「兄さん!」
「お、浩輔! やっぱりここだったか。住所を辿ってきてみたんだが、何やらすごいマンションだし、ガードマンは立っているし、何度か携帯にかけたんだぞ」
 黒いオーバーコートに、黒い鞄と携帯を手にした眼鏡の男は、なんと兄の浩一だった。
 浩一にだけは住所は教えたものの、知り合いとルームシェアするのだくらい話しただけで、引越しも会社の人がやってくれるからと手伝おうかというのを断ったから、浩一がここに来たのもはじめてである。
「あ、ほんとだ。ゴメン、地下鉄に載ってたから、気づかなくて」
 浩輔はポケットの携帯を確認する。
「それより、浩輔、一体全体どういうことだ?」
 浩一はがしっと浩輔の肩を掴んでその顔を見下ろした。
「どういうことって?」
「ルームシェアだとか言っていたが、こんな超高級マンションにルームシェアだなんて、まさかお前、変な金持ちの女に引っかかって…いやまさか、何か犯罪に加担してるとかじゃないだろうな?」
 確かに浩輔ごときにいきなりこんな高級マンションに住んでいると言われたら、庶民からしてみれば何かしら勘ぐりたくもなるかもしれない。
「心配しないで、そんなんじゃないから。知り合いって言ったけど、今の会社の社長なんだ」
「社長?」
「うん。こんなとこにいても寒いから、中に入ろうよ」
 浩輔はガードマンに挨拶し、エントランスホールでオートロックシステムにICカードをかざし、エレベーターホールに向かう。
 来訪者はガードマンのいるすぐ後ろにあるルームナンバーを押して住人にロックを解除してもらうか、パスワードを押すか、或いは奥にいるコンシェルジュに来訪の旨を告げてアポがあればICカードを渡してもらえるが、でなければ中に入ることはできない。
 しかも各々の部屋へのエレベーターはそれぞれ決まっている。
「どうぞ、兄さん、入って」
 玄関でまたICカードをかざし、ロックを解除すると、浩輔は兄を部屋へ招きいれた。
「靴は脱がなくてもいいのか?」
「うん、そのままでいいよ」
 ドアが開くのを聞いて、帰りを待っていたチビスケが飛び出してくる。
「ただ今、チビスケ」
 浩輔はチビスケを抱き上げると、兄をリビングに通して、テーブルに弁当の入った袋を置いた。
「今日は社長、出張で俺しかいないから、気をつかわなくてもいいよ」
 浩輔はキッチンに行くと、マグカップにコーヒーを入れ、バレンタインデーにもらったチョコレートを持ってリビングに戻った。
 浩一はコートをソファの背にかけて鞄を傍らに置き、少し居心地が悪そうに背筋を伸ばして座っていた。
「どうしたの今日は? 何かあったの?」
 浩一の前と自分にカップを置いて、浩輔は兄に尋ねた。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます