佑人は力の背中に腕をまわし、ぎゅっと抱きしめる。
「佑人……」
力はそんな佑人を見つめながら再びその唇をふさぐ。
舌を絡ませながら今度はゆっくりと味わうように嬲る力に必死で応えようとする佑人だが、しばらくすると身体の中で力の熱がまたぞろ圧迫感を増しているのを感じた。
そのうち力は唇を離して佑人の両膝を抱え、再びその奥へと腰を打ち付ける。
痛い、と思ったはずが、予期せず痛烈に甘い疼きを覚え、佑人は身悶えする。
「あっ……! や……っ!」
恥ずかしくて抑えようとしても、勝手に喘ぎが飛び出してしまう。
力が躊躇いもなく激しく突き上げるたびに過ぎるほどの刺激が佑人を襲う。
「好きなのは……お前なんだぜ?」
佑人の耳朶を噛むように力が囁く。
「……俺も好き……ちか……」
それ以上言葉にはならなかった。
互いに一気に解放される。
やがて白濁した意識が戻り薄らと目を開けると、佑人は身体を密着させたまま力に抱き込まれていた。
「……佑人……」
佑人の肩が少し動いたのに力が気付いた。
「たまんねくて……お前見てると、教室でもどこでも抱きたくなっちまって」
かあっと赤面させるようなことをほざく力に、佑人は「…バッカ……じゃないか」とボソリと言った。
「だから……内田とか何とか、どうだっていいんだ。どうせ俺はワルだからな」
「開き直ってんなよ……」
すっかり部屋の中は暗くなっていた。
エアコンもいれていないので空気はかなり冷たい。
「悪かった」
「え?」
「合格したら真っ先に知らせるっつっといて、Y大合格したんだが、やっぱS大しか行きたくなくて……んで、S大の発表まで知らせなかった」
それから力はどうしてもS大に行きたいわけを訥々と話した。
「俺は獣医にはなろうと思うが、ぜってぇ動物を殺したくねぇ。実験とかで動物殺さねぇとなれねえなんざ、バカやろうだってよ」
佑人の頭にすぐさま、小学生の時、仔犬を拾った力が口にした言葉が蘇る。
「そんなの、勝手な人間の都合でさ! 飽きたとか、飼えなくなったとか、勝手な理由で殺されちまうんだ! 俺は許せねぇんだ! 絶っ対!」
おそらくその言葉が力という存在を佑人の中でヒーローにした最初だったのだろう。
「実験でそんなこともできねぇようじゃ、獣医なんかになれねぇとかぬかす野郎もいるけどよ。以前、アメリカで獣医学部の学生が俺とおんなじようなこと宣言して、でも獣医になったヤツがいて、模型とかコンピュータで実験したりできることになってる。でもんなもん、やっぱ取り合わねぇ教授どものが多い。当然、日本じゃ考えられねぇ」
「でも……人間も動物だし、どんな動物だって心はあるし、生きる権利はあるはずだ」
佑人は胸が苦しくなる。
「そんな当たり前のことをわからねぇコンコンチキが多いのさ。んで、俺はとにかく、ぜってぇ動物は殺さねぇって、誰が何と言おうと、そうやって押し通そうと思ってた」
おそらく力ならやるかも知れないが、それはきっと周りからのバッシングを避けられないことになるだろうし、ちゃんと卒業させてもらえるのだろうか。
佑人はそんなことを心配した。
「河喜多のジジイんとこには娘がいて」
「ああ、アメリカで獣医になったっていう?」
「俺みたいなこと考えてアメリカに渡ったから戻ってこねぇらしい」
「そう……なんだ……」
こんな難しい問題が力の上にのしかかっていようとは、佑人は思いもよらなかったし、やっぱりそこまで考えている力が嬉しくもあった。
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