「あ、いや、わりぃ、その何かさ、山本力って結構色々言われてるヤツだし、イベントとかはあいつに頼ったりするくせに、普通はダチってつき合い、つい敬遠しちまうってか。ま、俺ら小心者だからな」
甲本は自嘲するように笑う。
確かに佑人は二年の時から力が周囲にどう見られているかはよくわかっている。
その周りにいる自分たちも近寄り難く思われていることも。
だが三年の進学クラスでクラス委員を買って出た甲本は、浪人覚悟と宣言していてかなりマイペースだ。
しかも肝心要なところで一言言ってクラスを引き締めるといった感じのリーダータイプだから、本人が卑下するような小心者などではないだろう。
「俺、山本や坂本と同じ中学だったからさ、山本のことだけじゃなく坂本もできるやつだけど結構曲者だって知ってたし、だから成瀬、何で奴らとつるんでるのかなって、どっちかってぇと、成瀬って優等生じゃね? つい、噂で聞いたみたいに、奴らに無理やり引っ張りこまれていいように使われてんじゃねぇのかとか、さ」
今度は佑人が苦笑する。
担任にさえイジメでも受けてるのではないかなどと勘繰られたこともあったのだ。
「いや、別にそんなんじゃないし」
「ああ、うん、だからさ、さっき教室で、成瀬が東山に教えてやってた時、山本が、帰って自分の勉強しろって言ってただろ。お前、勝手にするとかって言うし。で、なんだ、やっぱ噂なんてあてになんねぇなって」
噂通りだとしても甲本はお節介をやくようなことはしなかったが、力が佑人を気遣ったことが意外でわざわざ声をかけてきたのだろうか。
「仲間と一緒にいられる時間、もうあんまりないからさ」
甲本が力のことをちゃんと見てくれた気がしたからか、佑人はそんなことを口にした。
「仲間か……。それってすげぇよな、なんか。高三で、そんなこと言えるやつって逆に」
甲本は感心したように言った。
「力はマイペース過ぎて不器用だけど、仲間のことは大切にするヤツだよ」
ずるいのは俺だな。
佑人は心の中で呟く。
力を独り占めしたいから、噂を訂正して力に近づいてくるヤツが増えたりするのが嫌だった。
でもわかってくれるヤツに、力のことを誤解させたままでおくのは、力にとって不利になる。
本人は不利とか有利とかそんなこと考えないヤツだとしても。
「そっか。何か、勝手に思い込んで遠巻きにしてた俺ら、バカみたいじゃん」
それから甲本は来年の本番に備えて何校かテスト受験するつもりだと話した。
「一応あと一年頑張ってみる予定」
もう少し前に話していたら、甲本も仲間になれたかもしれないけれど。
こんな俺じゃな。
英語の補講が終わる頃、佑人が教室に戻ると、ちょうど力と東山が出てきたところだった。
「あ、成瀬、わりぃ、俺、やっぱ成瀬の勉強の邪魔してるよな」
東山が申し訳なさげに頭を掻いた。
「だからいいんだって」
力は何も言わず佑人を見たが、そのまま並んで歩き出した。
「でも俺さ、こんなベンキョで頭いっぱいにする日がくるとは思いもよらかなったってやつ? 妹のヤツ、頭おかしくなったんじゃないとか言いやがって」
東山が笑うので、佑人もつられて笑う。
「今までのオレは仮の姿だっつっとけよ」
「言ってろよ!」
茶化す力の背中を東山が拳で突いた。
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