静かな夜には13

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  ―――――――――が、しかし。
「あ、良太、いたいた!」
「よう、元気だったか? 俺がいなくてさびしかったろ?」
 翌朝、連れがきているという、フロントからの連絡に、うきうきとロビーに降り立った良太は、聞き覚えのあるそれらの声に、耳を疑った。
「あ…アスカさん? 小笠原……、お前ら、ここで何やってんだよ」
 唖然として二人を見つめる良太にアスカが言った。
「あら、やだ、青山プロダクション、スキーツアーご一行様、じゃない。ひとりで良太、つまんないだろうと思って、ほら、あたし、青森で仕事があったでしょ? 急遽、東京に帰るのを延期して、きてあげたのよ」
「やあ、良太、ちょっと久しぶり」
 えらそうに説明するアスカの後ろから、これまた、聞きなれた声。
「秋山さんまで!」
「心配しなくても、大丈夫。仕事なら、二日休んでも、大丈夫なように、きちんとスケジュールあわせてあるから」
 にこにこと笑う秋山に、良太はそうじゃなくて、と言いたい。
 そうだ、と小笠原に向き直る。
「お前、こんなとこにきてていいのかよ? 確かスケジュールは………」
「あ、平気、平気。スケジュールちゃんと俺調整してきたから。打ち合わせは、良太の名前使って、明後日に延ばしたし、CMの撮影はその翌日になったから」
「なったから、ってお前、勝手に」
 売れっ子タレントがマネージャーの名前騙ってどうするよ、と呆れてものも言えない。
「だって、俺、一人二役だもん、マネージャー兼タレント。スケジュールもばっちし管理してるから大丈夫だって。誰にも迷惑かけてないって」
「って、参ったな……それ、工藤さんに言ってあるのか?」
「それもご心配なく。置手紙してきたから」
「置手紙だあ!?」
「ニセコに行ってます、とかふざけた置手紙をな」
 思わず声を上げた良太は、小笠原の背後に現れた長身の男を見て、ほっとする。
「工藤さん」
 パコン、と丸めた新聞で小笠原の頭を叩くと、工藤は「ったく、ふざけたことしやがって」とフロントに向かう。
「ってー、暴力反対!」
 頭を撫でさすりながら、工藤に喚き散らす小笠原は、「なんで、工藤までくんの?」などとブツクサ。
 何で、はお前のことだよ。
 よほど言ってやりたかったが、良太はそれより工藤に久しぶりに会えたことが嬉しかった。
 風蓮湖の撮影スタッフには、会社の仲間がきたのでと断りを入れ、良太はアスカや小笠原らと一緒にゲレンデに向かった。
 ナイタースキーにまで繰り出したが、秋山は工藤や下柳に付き合い、温泉に向かったらしかった。
「良太、久しぶりにしちゃ、やるじゃない」
 アスカのスキーも、なかなかのものだ。
「明日はスノボ、スノボやろうぜ」
 一人スノボに興じていた小笠原は、そういうだけあって、かなりのレベルだ。
 ホテルに戻ってきた三人は、ちょうどゲレンデを降りてきた撮影スタッフとまた出くわし、そのままみんなで居酒屋に直行となった。
 夜中までカラオケで歌って飲んでいたが、良太が酔っ払ったアスカと小笠原をホテルに連れ戻った時はもう真夜中の二時を過ぎていた。
 工藤たちがいつ戻ってきたかは知らなかった。

 


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