よく晴れて、温かい。
三月に入ったばかりだというのに、今年はもう桜の蕾が膨らみ始めたと朝のニュースでやっていた。
確かに今年は暖冬で、京都でも冬らしい日が少ない。
卒業式、花見ができるんちゃうか、などとクラスで笑っていたが、さすがにそれは無理なようだ。
「おう、千雪、早いやん」
「そういうお前もえらく早いで、三田村」
玄関で出くわしたのは元生徒会長の三田村だ。
もう下級生に囲まれて携帯で撮りまくられている。
三田村も東京の有名私大に進学が決まっている千雪と同じで関東移住組だ。。
「生徒会で何か追い出しみたいなことやってくれるらしんや。式の前に生徒会室寄らんと。剣道部もやろ?」
「いや、うちの部はもう昨日のうちに簡単な挨拶とかすませたし」
「ああ、答辞読むから練習?」
「そんなもん、わざわざ練習するか。研二と一緒に写真撮ろう思て」
「何? 一眼レフ? 二人だけで? ずるいやん、俺も混ぜや」
文武両方に優れ、容姿もいけているという三田村は在学中とにかくもてた。何より弁がたつ。千雪をからかうのに命をかけていたような男だ。
「何がずるい。さっきから撮りまくってるやん。江美ちゃんきたら言っといて、菊ちゃんと裏のグラウンドの桜の木のとこにいるて」
三田村と研二とは一年、二年と同じクラスだったが、三年になって別れた。三田村と江美子、菊子と研二は同じクラスだが、千雪はクラスが違う。
「ほな、あとでな」
「おう」
幾分、神経が高揚しているのだろうか、千雪は何かに追い立てられるように研二を探していた。
今、研二を探さなくてはならないような、何だか得体の知れないものが千雪の心の中で渦巻いている。
それが何なのかわからない歯がゆさが、千雪はたまらなかった。
スニーカーに履き替え、ちゃんと履ききらないうちに、千雪は走り出した。
にほんブログ村
いつもありがとうございます
