だが次に返された台詞には、驚くことなど滅多にない工藤が、それこそ自分がどんな間抜け面をしているかを思わず想像した。
「俺にやったらおおきに。あいにく、お嬢さんやあれへんけどな」
京助と別れてから思考もまともに働かないままどことはなく歩き、路地を入ってすぐ目についたバーに入った千雪は、怒りに任せて酒を空けたところだった。
かなり頭に血が上っていた千雪は、また自分を女と間違えてあわよくばなどという魂胆のアホなエロオヤジに、思い切り後悔させてやろうくらいに皮肉をぶつけてやったつもりでグラスを空ける。
口当たりのよい酒を千雪はあっという間に飲み干した。
「これ、うまいわ。もう一杯」
カタン、とグラスをカウンターに置くと、エロオヤジがどんな顔をしているか笑ってやろうと、千雪はもう一度チラッと隣を見た。
確かに男は少し驚いて千雪を凝視しているようだったが、どっこい、もう一度男の顔を見直して、内心もっと驚いたのは千雪の方だった。
え………こいつ……、確か、プロデューサーだか何だかの工藤とかってやつ!?
勢いよく酔いが回り始めた頭で、千雪は記憶の中から男の顔と名前をクロスさせた。
まさか、こんなところで出くわすとは思わなかった。
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