朝から山間の町は時ならぬ吹雪に見舞われた。
お陰でスタッドレスに履きかえなくてはならなくなり、ムシャクシャして工藤はタイヤを蹴飛ばした。
近くのスタンドでタイヤを履き替えると、ロクにコーヒーもゆっくり飲めないままロケ地となっているホテルへ向かうことになった車の中でも、北風とともに吹きつける雪にイラついていた。
いや、イラついているのは己れに対してだ、ほとんどぶん殴りたいほど。
チクショウ、あんなガキをどうにかするつもりなんざ、金輪際なかったんだ!
自慢じゃないが、あんなガキをわざわざ襲わなくても、言い寄ってくる連中はいくらでもいる。
局にいたころから気が向けば、勝手に向こうが誘ってくるのだ、据え膳を喰らうこともある。
中には、役を取りたくて近づいてくる男もいる。
誰が好き好んで男のケツなんかと思っていたが、若手のイケメン俳優と言われているヤツが、一度近づいてきたことがあった。
そこまでして役が欲しいのかと、面白半分、相手をしてやったが、その辺の女よりよほど慎ましやかで可愛げがあった。
だが、冷酷非情だの、喰っては捨てるだの言われ、それを否定したりはしないが、嫌がる者を無理やりなどということは断じてなかったのだ。
それじゃ、犯罪だろう、未成年ならなおのこと。
…ったく、夕べはどうかしていた。
乱暴したり傷つけたりしたつもりはない。
だが、そんなことは今さら言い訳にもならない、暴力といわれたら暴力だ。
くそっ! これじゃ、一番嫌っているヤクザと同類だろう。
目が覚めてから自分がしたことに実際青ざめた。
シャワーを浴びて身づくろいをした工藤は、千雪が毛布をかぶって眠っているようだったので、そのまま声もかけずに部屋を出た。
全く、俺としたことが………
フン、俺こそ魅入られたか……
名前も知らぬ、美貌の主に。
イラついていたのは嫉妬だ。
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