花のふる日は 39

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 キッチンからダイニングへ現れ、テーブルに皿やカトラリーを並べ始めた平造に工藤は言った。
「大丈夫です。やっぱ薪は温かいですしな。それに今日は客人が薪割りを手伝ってくれました」
 意外な話を聞いて、工藤は平造を見た。
「上の、あれが薪割りなんかできるのか?」
「はい、何でも剣道部で鍛えられたとかで。段持ちだそうですよ。見かけによりませんな。クリカラモンモンが面白いと、わしの背中をしげしげと眺めよりました」
 笑ってはいないが、どうやら千雪は偏屈な老人の気に入ったようだ。
 さっきからそれこそ意外な面を上の客人は見せてくれるものだと、工藤は一層千雪に興味を抱きつつあった。
 
 
 
 
 ふとキーボードを叩く手を止めると、テーブルの上にある飾り時計の針が六時二十五分を差していた。
 とりあえず半分ほど打ち込み、ちょうどキリがいいところではあり、腹も減っていた。
 さっき携帯の電源を入れると、また小夜子から電話が入っていたので、小夜子にはエッセーを書くのに遠出をしていると千雪は一応連絡しておいた。
 相変わらず京助からはなかった。
 半分落胆している自分に嫌気が差し、タブレットをしまうと千雪は部屋を出た。
 リビングに降りて行くと、工藤が大きなテーブルにモバイルを開き、携帯で何やら怒鳴っているのに出くわした。
「何だって? ああ、明日は鈴木さん休みだ。何? お前はそんなことしなくていい! 留守電になってるだろ。オフはオフらしく休んでればいいんだ。おい、万里子? 聞いてるのか? …くそっ、切りやがった」
 眉間の皺を深くして、灰皿で煙を流している煙草を銜えるとまたどこかへ電話をし始めた。
 ちょうどその時、リビングの大きな柱時計が荘厳な音を鳴らして六時半を告げた。
 かなり古そうだが巧妙な細工だと柱時計にしばし見入ったあと、千雪はダイニングルームに向かった。


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