平造を振り返り返事を返すと、リビングの階段を上がって部屋に戻る。
「おっちゃんは、何や、ええ人みたいやけどな」
エロオヤジの部下にはもったいない。
宮島教授の話に出てきた男が平造なら、昔刑務所に入ったことがあるという。
平造と話をしている限り、罪を犯したとしてもおそらく何かよほどの事情があったのではないかと、勝手に推測する。
「……か、あれやな。ヤクザの世界、代理ってやつか………」
司法修習の際、いろいろな犯罪者を知ることになったが、どんな人間の行動にも何らかの理由があるのだろう、と千雪は思っている。
強盗殺人で死刑囚となった犯罪者と話をしたこともあるのだが、そういえば担当検事が千雪に対して、「君は常に冷静でかなり度胸がある」と評したことを思いだした。
「何があっても動じないよね、小林くんて」
中学、高校を通じて、そんなことも言われていた。
「いつも冷静でなんかいられるわけないやん」
それは本当の千雪を知らないからだとわかっている。
「ええか、まず自分の力考えて、すぐケンカ買うたりすんなや」
別れ際まで、研二はそんなことを心配してくれた。
取り乱して、ぎゃあぎゃあ泣き喚く千雪をなだめてくれたのは京助だった。
「そうか……ほんまの俺をわかってくれるやつ……もうおれへんのんやな」
タブレットを開きながら、千雪はひとごとのようにポツリと呟いた。
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