千雪は嫌な気分を払拭できないまま、『またしても、名探偵登場! 天誅! 殺人事件』というタイトルの記事をクリックした。
昨夜、二件の殺人事件が立て続けに起きた。
被害者の一人は世田谷の開業医で、昨夜の夜十一時頃、医院の院長室で頚動脈を鋭い刃物で切られて出血死、その約三十分から一時間以内と見られているが、次に世田谷西署の所轄刑事がやはり同じように殺された。
問題は、張り紙はなかったものの、今度は大手新聞社関連の人気SNSに「名探偵登場! 天誅!」というタイトルで、暗に事件の犯人であることをほのめかす書き込みがあり、時間や場所など犯人でなければわからない内容になっているという。
サイトは既に閉じられていて、見ることはできなかった。
「嫌な感じやな……」
名探偵というキーワード、さらに容疑者が、ぼさぼさ頭に黒渕メガネ、ダサいジャージという、どこかで聞いたような人相風体に、千雪はのんびり別荘で休養しているわけには行かなくなった。
どうしても気になった千雪は、佐久間の携帯を呼び出してみた。
「あ、先輩! 今、どこにいてるんや? 大変なことになってますがな!」
佐久間は携帯に出るなり、大きな声で言った。
「一昨日から山に篭ってエッセイの原稿やってたから、さっきネットで見て、気になったよって」
「何、のんきなこと言うてはるん、テレビ見ました? あれやとまるで先輩が犯人みたいな取り上げ方で……」
千雪は携帯を切ると、タブレットをバッグに突っ込み、コートを掴んで部屋を出て階下に降りて行った。
工藤はダイニングでコーヒーを飲んでいたが、きっちりスーツを着込み、どうやら出かけるらしかった。
「おはようございます」
「おはようございます。すぐに用意しますから、座って待っててください」
平造が言った。
「あ、でも、あんた、社長さん、これから東京戻るんなら、俺も乗せてってほしいんやけど」
すると工藤はニヤリと笑う。
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