「きさま……! 言うにことかいて…!」
ついに西岡は千雪の胸倉を掴んだ。
「西岡さん!」
慌てて渋谷が間に入り、西岡を千雪から離す。
「ほんまに、これやったら世の中から冤罪が消えるわけないですよね」
西岡は拳を握り締め、すごい形相で千雪を睨みつける。
「今、西岡警部がおっしゃいましたよね、屈強な刑事を『油断させておめおめと殺してしまった』のが犯人ですよ。俺以外のね。渋谷さん、俺用に使てたメルアド、他に知っている人はいてへんのですか?」
すると、渋谷は一瞬何かを思いついたような顔で、考え込んだ。
「いい加減御託を並べるのはやめて、とっとと吐いたらどうだ?」
「証拠もなしに犯人扱いっていくらなんでも優秀な日本の警察がやることやあれへんでしょ? 第一、俺が犯人やいうんなら、動機は何です? 俺は被害者の誰とも面識はないし、ましてや殺すような理由があるはずがない」
「だったら、一昨日の晩と昨夜、どこで何をしていた!」
「やから言うたでしょ。東京にはいませんでした、原稿書くためにあるところにいました、て。一昨日も夕べもです。今朝、東京に戻って来たんですから」
「それを証明する人間は?」
「……それは………」
「フン、そんなデタラメ、通用すると思ってるのか?!」
千雪は黙り込んだ。
確かに、ぼさぼさ頭の黒渕メガネの小林千雪を証明する者はいないのだ。
ああ、めんどくさいことこの上ないな………
高梨さんと電話で話したんは、犯行時間とずれてるし、電話やからな………証明にはならへんやろし………
千雪が連行されて既に二時間、千雪にしてみれば無駄な時間が流れた。
だが、この頭でっかちの刑事たちは、くだらない人相風体にばかり踊らされて真実からかけ離れたところにいる。
どう考えても真犯人は俺を犯人に仕立て上げるつもりなんや。
しかも昨夜の犯人は、明らかに一昨日の犯人に便乗しているし。
だが、今のところ、刑事たちが根負けしてくれる以外、千雪にも打開策は見つからなかった。
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