「それで俺を疑ったいうわけですか」
「いや、決して君が犯人だと思っているわけでは……だから、犯行時間のアリバイを聞きたいんだ」
犯人だと思っているわけではないといいつつも、アリバイがなければ犯人とみなそうというのだから、警察を頭から信用することに千雪は疑問を感じてしまう。
しかも、犯人と思われている人相風体がいわば、千雪の作り出した架空のものでしかないということから馬鹿げている。
推理小説家、小林千雪イコール名探偵、イコールぼさぼさ頭の黒渕メガネ、ヨレヨレジャージの冴えないオヤジ、などというマスコミに踊らされた図式が勝手に一人歩きして、世間の認識となっているというのも、恐ろしいものだと思う。
困ったことにこの二日間、軽井沢にいた小林千雪の人相風体は、それとは全く違うものだということだ。
つまり本来の小林千雪のアリバイは証明できても、架空の小林千雪のアリバイを証明するものは誰もいないことになる。
あほらしい!
「最初の事件が撲殺で、昨夜の事件が刃物を使った犯行、最初が張り紙で、昨夜がネットを使ったという手段が全く違ったものだったにもかかわらず、人相風体が似通っているというだけで、俺を犯人扱いですか? 大体、俺は血ぃ見るの嫌いやから、小説にも使わへんのですけどね。この犯人、名探偵名乗る割りに、俺の小説読んでへんよな~」
「きさま、おちょくっとるのか!?」
またしてもいかつい西岡が立ち上がって怒鳴る。
「西岡警部? 捜査一課ではおみかけせぇへんから、ひょっとして若い刑事が殺されたいう世田谷西署の警部さんか。大体、現役の刑事さんを一撃で殺すなんてマネ、俺にでけると思います?」
すると西岡はうっと言葉に詰まる。だがすぐまた勢いを取り戻し、「きさまが小林何がしだと名乗れば、やつは油断したに違いない。でなければあの屈強なやつがおめおめとやられるわけはない」と続ける。
「つまり、てっきり俺を犯人扱いしていると。仲間の仇取りたいいうのはわかりますけど、まるきり時間の無駄遣い、見当違いも甚だしいですよ」
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