花のふる日は 50

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 これが自由主義国家の警察がやることかと、いささか呆れながら、千雪は逆に尋ねた。
「バットからは指紋は出ていない。おそらく手袋をしていた……」
「一昨日の晩、午後十一時頃、どこにいたか聞いているんだ!」
 渋谷の言葉を遮って、西岡がまた同じことを聞いた。
「その日の十一時頃なら、東京にはいませんでしたよ。原稿書くためにあるところにいました。でも、その人が証言してくれるかどうかわからないし。それに、優秀な警察なんだから、俺なんかに構ってないで早いとこ真相突き止めてくださいよ」
「いい加減なことを抜かすな!」
 西岡は会議用デスクを両手でバシンと叩いて威嚇する。
「ミステリー作家だか何だか知らないが、適当な筋書きをでっちあげても、調べればわかるんだぞ!」
「だから、とっとと調べたらええ、言うてるでしょ」
 腕組みをして、千雪は睨み付けて来る西岡をまともに睨み返す。
 それからしばらくは黙秘する千雪と西岡の睨み合いで、静かな、だが、互いにイライラするような時間が続いた。
「俺なんかかまってたら、真犯人、つかまりませんよ。初動捜査、間違うとるし。司法修習こないだ終わったばっかで、こんなずさんな捜査見せられたら、情けなくなりますよ」
 いい加減、くだらない時間を過ごすのに嫌気が差した千雪が口を開いた。
「何だと!」
「実はこのことは公表していないんだが……」
 今度は今にも掴みかからんばかりの西岡を制して渋谷が口を挟んだ。
「小林さんとだけの連絡用に使っていた俺宛のメールに、犯人からと思われるメッセージが入ってたんだ。例の『名探偵登場! 天誅!』っていう。内容が昨夜の事件を思わせる内容で、発信されたのは都内のネットカフェだったんだが、そこでもその、黒渕メガネでジャージ、みたいな人相風体の男が目撃されていてね」
 千雪はなるほど、とちょっと笑う。
 おそらくそれで一課が色めきたったのは言うまでもないだろう。


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