花のふる日は 97

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 無精ひげもワイルドな安川は、教員をしているという。
「けど、あの小説家の小林千雪は、一体何やねん? 別人か?」
 この場に集まった皆がいつ切り出そうと思っていた疑問を、安川がやっと千雪にぶつけた。
「ああ? んなもん、あれや、金田一耕輔を目指してん」
「何やね、それは」
「せっかく物書きやるんやったら、こう、おもろいことやってみたかってな、ちょっとコスプレしてみたんや。そしたらすっかり信じ込まれよって、編集とかも」
 ガハハハと笑う安川につられるように周りに笑いが起こる。
「わかったわかった、もし、この辺りに取材とかきよっても、話合わせとくし」
 酒屋の島田がきっぱり言った。
 周りも、おっしゃ、わかったと頷く。
「そら、助かる」
 千雪は笑う。
「こんばんは」
 玄関から聞こえてきた声に男たちの笑い声がやむ。
「きたで! 花が!」
 千雪よりも早く、ドアの近くにいた男どもがわれ先と玄関へどたばたと向かう。
 しばし、玄関先で男どもの嬉しそうな雄たけびが聞こえたかと思うと、ドアが開いて美人が二人現れた。
「こんばんは、千雪くん、お久しぶり」
 ひらひらと手を振るのは、結婚式の前日に千雪に会いにやってきて以来となる、沢口江美子だった。
「江美ちゃん」
 にこにこと笑う江美子は、髪を編みこみし、白いブラウスに白いスカートと楚々とした雰囲気もそのままに、菊子の話から受けたような薄幸な要素は見当たらないように思われた。
 そして後ろに現れた、江美子より少し長身の、きりりとした瞳も涼やかな美人は、長い髪をおろし、水色のスーツがよく似合っている。
「ようきたな、桐島さん、久しぶり。卒業以来?」
「うん、久しぶり、ほんまに、変わってへんな、小林くん」
 壁際にグラスを持って立ちながら、京助はそんなやり取りを眺めていた。


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