花のふる日は 96

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   ACT 10
 
 
 何でこうなるん?
 千雪は一つ溜息をついた。
 もう昔のようにはいかないだとか、見慣れた町並みもよそよそしいだとか、散々ぐちぐちとスネまくっていたとはいえ、一方では、諸々の面倒なことやうるさい都会の喧騒から逃避して、静かにひとりでぼーっとした時間を過ごしたい、とも思っていたのだ。
「ビールと焼酎、どーんと差し入れや!」
 キッチンのドアが開いて、実家の酒屋を継いだ島田がビールの大瓶をひとケースと一升瓶を持って現れた。
「何や、ビールワンケースか、一郎、けちくさ」
 おおーっという歓声の中、不満の声もあがる。
「哲、お前の付けなら、何ぼでも持ってきたるで」
「お前、しがない不動産屋の社員に、んなことさせんなや」
 急遽、居間に二つつなげられたテーブルには、寿司にピザ、サラダにクリームチキンパイ、ローストビーフ、魚介のマリネにトマトとイカのパスタなどがところ狭しと並べられている。
「千雪、ここの新しいグラス、使こてもええ?」
「何でも使こて」
 思い思いに座ったり立ったりしている間を縫って、グラスや皿や箸を置いたり、キッチンで料理を作ったりしているのは、親戚のカフェバーで働いているという、包丁さばきも板についた井原と京助だ。
「せぇけど、こう、見渡してもなんや花がないんは、何でや?」
「ほんまや、千雪、お前のおっかけしてた、女学院の子ぉら、どないしてん?」
「うちのガッコにもいてたやろ、わんさか、何人かみつくろってこいや、千雪」
「どんだけ昔の話やねん」
 同級生やら剣道部員ら総勢十五人程が集まっている。
 二十三歳ともなると大方が社会人になり、家庭を持っている者もいるし、すっかりオッサンじみていたりする。
「そこいくと、千雪、ほんま、変われへん、まんまやんか」


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