「そうそう、涼さんと俺とは学校は違ったけど同い年だし、いっつも京助さんが先頭に立ってなんかやらかして。時々やってくる綾小路の親戚連中の方が逆に俺なんかのこと、使用人だろうって扱いしてくれますけどね、こっちは何も言えねーし」
ぶーたれる公一を京助は笑う。
「言いたいやつには言わせておけ」
京助はきっぱり言い放つ。
「そうっすね。綾小路の人たちはみんないい人で、お陰で俺はグレずに真っ直ぐ元気に育ちました」
へへへと笑う素直な青年に、千雪もつられて苦笑した。
「あ、でも奥さんはちょっと苦手かも。なにやっても暖簾に腕押しっつーか」
「お母さんは育ちが育ちだったからな。今更変えれないだろ。親子の間でも敬語使うようなうちに育ってみろ」
「お母さんて、今の?」
千雪はマイペースでグラスのワインを少しずつあけていた。
京助の実の母親は亡くなったはずだ。
「涼の母親。根っからのお姫様なんだよ。でもまあ、徐々に世間のことを俺らが教えてやってる」
ふんぞり返って京助が答えた。
「俺ら、て、お前が、の間違いやないのんか? 教えるやなんて、えらそうに」
「るせーな。いんだよ、こもっているよりか。お陰で最近はボランティアとか顔を出すようになったし」
千雪の突っ込みに、京助はもっともらしい理由をつける。
「お陰で俺が、最近、奥さんの運転手いつもやらされてるんっすよぉ、女の子と約束あるってのに、オヤジのやつ、奥さん優先しろなんて言いやがるし~」
「あきらめろ、目上の者は大事にするんだな」
「京助さん~、んなぁ、俺、また振られっちまいますよぉ」
泣きつく公一を京助はニヤニヤ笑って調子よくあしらう。
京助の家は格式高い旧華族とは噂で聞いたことがあるが、そんな家柄のわりにオープンで和やかな家らしい。
「京助のジャイアンなんは内も外もないいうこっちゃな」
我が意を得たりと、千雪は締めくくる。
「るさいな、いちいちお前は」
京助がジロリと睨むが千雪は意にも介さなずにグラスのワインを飲み干した。
「千雪さん、言いにくいことズバズバ言いますねぇ、この京助さん相手に」
公一が目を細めて笑った。
公一は初対面と思えない懐こさで千雪に接するので千雪にしては珍しく気詰まりも感じない。
十二時近くまで、京助や公一がどれだけ悪さをしたかという子供の頃の武勇伝に笑い、ワインクーラーにあったワイン三本を軽く空けた。
千雪の部屋は客間らしくバスルームもついていたが、一階に広い風呂を藤原が用意したと京助に言われ、せっかくなのでそちらに入ることにした。
「俺も一緒に入ってやろか?」
千雪が温泉でも風呂でも他人と入ることに抵抗があることを知っていて、京助はちょっと絡む。
「遠慮しとく」
千雪はバスケットシューズをスリッパに換えて立ち上がった。
「今更の仲だろ? そんなんじゃ、お前、いつまでたってもトラウマ克服できねーぜ」
「結構やし。ついてこんとき」
ビシッと拒否ると、千雪は風呂にむかった。
十人は一度に入れそうなくらい大きな風呂は檜造りだ。木の匂いが心地よい。
「贅沢やなぁ」
ポツリと口にして、千雪は湯の中で思い切り手足を伸ばした。
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