原稿の締め切りも終わっているし、かなり強引にニセコまで連れてこられたものの、思いがけない雪を見せられ、美味い食事のあと広い湯船につかっているなんて目まぐるしい展開は、千雪にとっても心が浮き上がりそうな状況だ。
風呂から上がり、用意してあったバスローブをはおると、千雪は脱いだ服を持って部屋に向かった。
風呂を出るとリビングとは逆の位置に二階へ続く螺旋階段があり、リビングは吹き抜けになっている。
ドアを開けようとノブを握った途端、後ろから手が伸びて振り向きざまに唇をふさがれる。
「………こら……京助、やめ!」
幾度もキスを浴びせかける京助の裸の胸に腕を突っ張り、途切れ途切れに息をついて千雪は抵抗する。
「………このドアホ! こんなとこで何考えとんね!」
夜も更けて誰もいないほの暗い廊下とはいえ、この屋敷には他にも人がいるのだ。
はだけそうなバスローブ一枚の京助は、千雪の腕を掴んだまま奥の自分の部屋へと足早に急ぐ。
ドアを開けて千雪を力任せに引き入れると、ものも言わずまた忙しなく口づける。
その間にも京助の手は千雪のバスローブの中に入り、後ろから脱がそうとしていた。
千雪は持っていた衣服を手から落とした。
「…ドアホ! クソアホ…京…!」
こういう時の京助が何を言っても無駄だということは、千雪も身に沁みてよくわかっている。
迂闊だったと思った時にはもう遅かった。
絨毯の上に二人して倒れこみ、性急に京助の手が千雪の身体をかき撫でる。
乱暴かと思えば不意に優しく指先が触れまわる。
湯上がりの肌が違う熱を帯びて千雪の心から溶かし始める。
腕を回すと京助の背中はひどく熱い。
京助の指や吐息や、それらが千雪の全てを支配してもう覚えのある高みへと追い上げていく。
「……ン……あ……っ!!」
京助はグイと千雪の奥へ自身を捻じ込ませた。
穿つたびに千雪の唇から漏れる息が甘く染まると、京助の身体を凶暴な血潮が駆け巡るのだ。
口にしたらきっと千雪は怒るのはわかっているが、熱に焼かれたその肌がおそらく今まで知っているどんな肌より美しい色をして、京助を蠱惑し、酩酊させる。
「……くそっ…!………俺以外のやつを……惑わすんじゃねぇぞ………」
冷静になろうと努力はしている。
しているのだがどうしても、どうしても千雪に近づく者に必要以上に疑いの目で見てしまう。
「……千雪…」
京助の呻きを耳元に感じた途端、内で暴れる熱に溺れ、そのうち千雪の意識は混濁し、熱く強烈な波に飲み込まれた。
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