氷花9

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 天井が高い。
「建てたのは大体その頃だったみたいだぜ。ただし、もともと小樽にあったのを二十年位前にここに移築して、補修したり、空調入れたりしたらしい。ベッドとかソファとか椅子なんかも張り替えてある。小樽にあった頃のことはうろ覚えだが、マジに暖炉だけとかで暖を取ってたから冬はちょっと勘弁だったな」
 千雪が興味を持ったらしいのに、京助がざっと説明を施した。
「重要文化財って感じ? 女の子なんか好きそうやん、こんな部屋」
 ダウンジャケットを脱いで椅子に引っ掛けると、千雪はぐるりと部屋を見回す。
「お前みたいに分析したりはしないな」
「ふーん、ほんで何人くらい女の子連れてきたん?」
 からかうように聞かれて、京助は千雪を睨みつける。
「昔の話だ! 着替え持ってくるから待ってろ」
 つい調子にのってぽろっと口にしてしまいそうになった京助は、「あのヤロー、誘導尋問しやがって」とむっとしたまま部屋を出る。
「フン、ごまかしよって」
 千雪はドアを睨み付けた。
「京助さん、ダイニングにお食事の用意できました。お風呂はわかしてありますが、お食事のあとになさいますか?」
「ああ、先、食べる」
 ちょうど階段を上がってきた藤原に、京助はそう答えて向かいの部屋に入っていくと、チェストからセーターを取り出し、自分の部屋へ戻ると、キャリーケースから千雪のスエット上下や下着をいくつか取り出した。
「ほら、着替え。足りなければあるから言えよ」
「もっと早うゆうてくれとったら、俺、用意したのに」
 戻ってきた京助に千雪は文句を言いながら着替えを受け取った。
「時間がなかったんだから、仕方ねぇ。それより何か食うぞ、下行って」
 一階は玄関ホールに続いて三十畳ほどのリビングがあり、その右手奥にダイニング、キッチンとなっている。
 左手奥には廊下が続いているようだ。
 テーブルにはカニを使ったペペロンチーノソースのパスタ、アンチョビ、生ハム、スモークサーモンなどのカナッペ、何種類ものチーズ、トマトやアスパラのサラダ、そして氷の入ったワインクーラーにはワインが数本用意されていた。
「わあ、美味そうやな。おそうにお手間かけてしもてすみません、藤原さん」
 あくまでも礼儀正しくテーブルの横に控えている藤原に、千雪は声をかけた。
「お気になさらず、どうぞ。近くのレストランに頼んで作ってもらったものです。お口にあえばよろしいのですが」
 八人は座れるだろう大テーブルの右端に向かい合って二人が座ると、藤原はワインを取ってソムリエナイフでコルクを抜いた。
「あれ、公一さんは?」
 千雪が聞くと、「いえ、お客様とご一緒というわけには」と藤原は一瞬躊躇する。
「かまわないぜ、こいつなら。どうせ腹減ってんだろ? 運転しっぱなしだったし。呼んでこいよ」
「はあ……しかし」
 まだ戸惑い気味の藤原をよそに、「やったー、いいの? 京助さん」と公一は聞いていたらしくキッチンから顔を出した。
「おう、座れよ」
「じゃ、遠慮なく」
 たったか入ってきた公一は、勝手に千雪の横に座る。
「藤原、今日はもういいぜ、休めよ。あとは勝手にやるから」
 京助が言うと、公一も「オヤジ、片付けとか俺やっとくから」と言う。
「それでは、失礼いたします」
 あくまでも礼儀正しく一礼すると、藤原はダイニングを辞した。


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