「まあ、京都の店臨時休業にして、親父とオフクロにもこっち来てもろて、あとうちの職人さんとかも、総出やな。それに、こないだ決まったこっちのスタッフには即戦力になる職人さんが何人かいはるんや」
千雪はそれでも心配そうな顔をした。
「そんな顔せんでも、いざとなったら、頼りになる助っ人もいはるし、何とかなるて」
それにしても、あらためて研二は凄い、と千雪は思う。
ここまで創り上げるのに、どれだけ試行錯誤して、創り上げたのだろう。
千雪が東京でうだうだしているうちに、こんなすごい職人になって、自分の店を任されようとしている。
それをちゃんと認めてくれる人がいるということが既にすごい。
「研二はすごいなあ」
思わず言葉がこぼれていた。
「何言うて、ただの菓子職人や言うたやろ」
「いいえ、ほんとに、すごいと思うわ。ごめんなさいね、言葉が足りなくて」
小夜子も千雪に同調した。
「もっとご自分に自信を持ってくださいな」
「ありがとうございます」
研二はそのまま芝にも見てもらうことになっているというので、大和屋で別れ、千雪はアパートに帰ったが、パソコンに向かっていても、夜になるまであまり作業も進まなかった。
俺もがんばらんとあかんな。
京助の言うように、ファンがアパートに押し掛けるようなことにはならないとは思うが、映画になることで原作もあらためて読まれ、評価の対象になる可能性もある。
「まあ、三文探偵小説にしてもや」
しばらく出張でいなかったらしい三田村から電話があったのは、そんなことを呟いていた時だ。
「へえ、研二、すごいな」
研二の菓子のことを話すと、三田村からも同じような言葉が返ってきた。
「あーあ、それに比べて俺は何しとんのや」
「俺もさっき同じことを思うとった」
「お前は来年、原作の映画が封切られるやんか」
「映画は映画やろ。どうせ俺のは三文探偵小説やし」
すると三田村が吹き出した。
「何、拗ねてんね。それより、江美ちゃん、いつやった? 生れるの」
三田村も気になっているらしい。
「勝手に桐島と連名で祝い送ったんやけど」
「ああ? まだ連絡とってないんか?」
「距離置こうって言われてんのに、連絡いれたかてあかんやろ」
こっちはまだこじれているようだ。
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