メリーゴーランド100

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「帰るぞ」
 食事会がお開きとなると、大長が一杯どうですか、と原夫妻を誘っていたが、京助は「お先に失礼します」と俊一郎や正子に声をかけ、千雪を促した。
「公一に送らせましょうか」
 玄関を出る京助を藤原が呼び止めたが、「タクシー拾うからいい」とそっけなく答えて家を出た。
「よかったんか? お父さん、久々お前と話したかったんちゃう?」
「んなのいいんだよ、兄貴や涼がいるんだし」
 京助が不機嫌なのはわかっていたから、千雪もそれ以上は何も言わなかった。
「クッソ、何でパリくんだりまで行くんだよ」
 タクシーに乗り込んだ途端、京助が口にした。
「どっちかというと、パリの方が二人とも気が楽なんやないか? それに向こうでしばらく暮らすんやから向こうの人との付き合いの方が大切なんやろ」
「だからそれは兄貴たちのことで、俺らには関係ないだろうが」
「俺かて、パスりたいて小夜ねえにチラと言うたけど、却下されよったし」
 とにかく彼らのイベントがさっさと終わってくれればと千雪は思う。
「最初の週末だったか? 兄貴がチケットやホテル用意するって言ってたから、まあ仕方ない。終わったらとっとと帰るぞ」
「パリ見物はせえへんのか?」
 からかい気味に千雪が聞くと、「学会の準備でクッソ忙しいって時に、悠長なことしてられっか」と京助はイラつきながら言い放つ。
「ほな、俺一人で見物してこよ」
「何だよ、端っから行きたくねえって言ってたのに」
 怪訝な顔つきで京助は千雪を睨む。
「行かざるを得ないんやったら、せっかくやしな。俺、初めてやからパリとか。小説にネタになるか知れんし」
「勝手にしろ」
「勝手にするわ」
 ふと、千雪は思ったのだ。
 次は京助さんの番ですねえ、という俊一郎の言葉が耳から消えない。
 日向野を断っても、そのうちいい方がきっと見つかりますよ、なのだ。
 いい年になった男にはごく一般的な話なわけで、紫紀と小夜子が無事結婚した暁には、当然次は京助だと、やはり、京助の両親もそう思っているわけだ。
 無論決めるのは京助なのだろうが、結婚なんて案外、小夜子のように、そうね、でOKしてしまえるものなのかもしれない。
 


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