「はあ」
「俺ら十二分に邪魔やない?」
「でかいのが三人もおったらなあ」
キッチンは十分広いが、確かに三人は邪魔でしかなさそうだ。
千雪と研二、それに佐久間はキッチンを出て部屋に戻ることにしたのだが、リビングを通らないと階段に行けない。
まず同じ屋内にいて不可能に近かったのだが、千雪はアスカと顔を合わせるのをできる限り避けたかった。
「研二、さっきの子、そこにおるか?」
「さっきの子? アウディの? お前、知り合いなん?」
すると佐久間が振り返った。
「あの子、確か、モデルの中川アスカでっしゃろ?」
「何や、そんな子といつお知り合いになったんや?」
研二にもからかわれて千雪は渋面になった。
「いや、京助の知り合いやし」
リビングに差し掛かった時、風呂のようすを見に行って戻ってきた京助が、「おい、風呂、お前らも入れよ」と三人に声をかけた。
「千雪はどうする?」
「ああ、俺は遠慮しとくわ」
「まだ、トラウマか? ええ加減克服せえ」
研二が笑う。
「そない言うても……」
ところがその時「あああっ、小林千雪!」という声が響き渡る。
ちょうど二階から降りてきたアスカが腕組をして千雪らの前に仁王立ちになった。
「やっぱりいた! 小林千雪、あたしに何か言うことあるでしょ?」
ここはもう開き直るしかないと千雪はアスカに歩み寄った。
「そんな、フルネーム何度も連呼せんかて」
「連呼するわよ! あたしが小林千雪のファンだって言って、ハンカチにサインもらったの、覚えていないとは言わせないわよ!」
すると速水が面白がって出てきた。
「何、何? アスカ、千雪くんのファンなんだ? それが一体全体どうしたわけ?」
「うるさい速水! 外野は黙ってて!」
速水はニヤニヤと肩をすくめる。
「うるさいのはお前だ、アスカ。一体何しに来たんだ?」
「京助も黙ってて! あたしは小林千雪に話してるんだから!」
この剣幕に、日向野がすくっと立ち上がった。
「あなた何者なの?」
「私のことわかってたくせに、知らんぷりして、その上、京助の部屋に泊めさせたり!」
日向野の発言は無視して、アスカは言った。
「そうかて、あの場合、いっちゃんセキュリティしっかりしとんの、京助とこやったんやから、しゃあないやん。アスカさん狙われとったわけやし」
話がきな臭い方面に飛んだので、周りは黙った。
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