「席、別にしてもろたらええんちゃう? 長樹さんと。オヤジさん殴ったいうんで敬遠されとるんやろ?」
「お前、俺を何だと思ってるんだ。長樹はいつまでもそんなガキの頃の話を根に持つような男じゃねえし。あの綱俊の息子にしちゃ、ちゃんとしている。綱俊は長樹を東洋商事に入れようとしてたんだが、長樹は無視して医師になったくらいの骨太なやつだ」
「へえ。ジャイアン京助を恐れない人もおったわけや」
親戚の話で気にかかったのが何か、千雪は思い出した。
「京都の親戚て、婚約パーティに来とった?」
「叔父夫婦と従姉夫婦だけな。今度はその妹二人もくるらしい」
京助は眉を顰めた。
「あいつら、煩いなんてもんじゃない、特に真ん中は自己中なやつで、こないだの、日向野系な女だ」
「まあ、でも式の間だけやろ?」
「それでも俺とは水と油だからな。二人とも金にものを言わせて上はオーストリア、下はニューヨークに留学中で、わざわざパリへ遊びにきたいだけだ」
京助と付き合っていて、おもしろいのは金にものを言わせる、ようなことが嫌いらしいところだ。
高級外車など何台も持っているが、京助の理屈では高級だからではなく、スペックを吟味するとそれになった、というわけだ。
必要でないものは買わないし、千雪のアパートにしてもDIYに使ったものはホームセンターなどで調達したものだし、自分の部屋は紫紀が持っているマンションの一室で、どれほど素晴らしいピアノでも、使わなければ京助にとっては灰皿置きになってしまう。
さらに体育会系な上、道理を通さない者に対しては説教までする。
日向野がいい例で、相手が女であろうと容赦ない。
そんな京助に言わせると、金にものを言わせた留学などはもってのほか、というやつなのだろう。
「留学できる環境ならしたいことやれてええやん」
「お前の同級生、桐島みたいに、ピアノに命かけてる、結果も出してるだろう。バイオリンなんてお遊びでやるようなもんじゃない」
バイオリン、というキーワードに、千雪はまた引っ掛かる。
「バイオリン、やってはるんか? その人、京都のどのへん………やのうて、叔父さんて名前は?」
「久世豊って、お前にも紹介しただろう? 婚約パーティの席で」
「や、もう、人多くて、覚えてない。けど、久世とか苗字、あるよな?」
「何が言いたいんだ?」
訝し気に京助が聞いた。
「いや、久世、でバイオリンやっとるて、まさか、久世薫子やないやろな?」
京助はしばし千雪を見つめた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
